今後の建設需要(13)
2021.02.15
建設産業にかかわって半世紀近くになりますが、根本的な問題は何一つ改善されていないように思います。
発注価格やコスト構造の不透明さ、発注者や元下の上下関係、長時間労働、パワハラなど、私の新人の頃からの問題が今も続いています。
「適正価格」や「適正工期」などの“適正”言葉も耳にタコですが、言葉遊びから一歩も進歩していない現状があります。
発注者も大手企業も、それらの解決は諦めて、BIMや現場のIoT化といった未来技術に希望を掛ける姿勢になっています。
ここで、BIMなどを「未来技術」と言ったのは、未だ「普通に使える技術」にはなっていないという意味です。
私が度々、こうした技術に否定的な意見を述べてきたのは、技術そのものを否定しているからではありません。
取り組んでいるゼネコンやサブコンの企業努力は評価に値しますし、やがて施工現場に普遍的に使われる日が来るであろうことは疑っていません。
しかし、圧倒的多数を占める中小業者が、こうした先端技術を使いこなす日々は、果たしていつ来るのでしょうか。
世の中には、未だ数万台のWindows7のパソコンが動いていると聞きます。
「ウチは10だよ」と言う会社も、よく聞いてみると「7からのアップデート」だったりします。
私は、こうした現状を、どうこう言いたいわけではなく、IT化の前に、自社の現場運営や本社機構の支援体制のあり方を「ゼロベースで見直すべきでは」と言いたいのです。
つまり、企業の主役である従業員の働き方が半世紀前と変わっていないことに危惧を覚えるのです。
個人の技術力という点では、むしろ退化しているのではないかとさえ思うのです。
幸いというか、受注産業である建設業は、自社だけが劣っていれば業績悪化で消える運命が待っていますが、他社も同様のレベルであれば安泰なのです。
「ウチだけじゃないから、まあ、大丈夫」となります。
しかも、様々な規制に守られ、他産業からの参入がほとんど無いという恵まれた業界の構図があります。
また、お客様である公共発注者や不動産会社の設計・施工管理能力も低下する一方なので、その点でも相対的に心配するほどのことはないという皮肉な現状があります。
まして、一般企業や個人顧客は、てんで素人ばかりですから、いくらでもごまかせます。
小さなことですが、最近、水道修理などで「高額な請求をされた」というようなネットの書き込みが散見されます。
昔からある「シロアリ商売」の水道工事版ですね。
政府は「スーパーシティ」というAI機能を備えた新しい実験都市の公募を始めます。
北九州市は、すでに昨年末、同様の公募を初めたということです。
業界紙を読むと、市当局は以下のように言っています。
「デジタル先端技術を産業や社会生活に取り入れ、現実とサイバー空間を高度に連携させ、環境・経済・社会の好循環によるSDGs(持続可能な開発目標)の加速化、脱炭素社会の実現を目指す」
大仰な言葉の羅列ですが、肝心の中身は空っぽな印象です。
そう言えば、菅首相の所信表明も「デジタルとグリーン(脱炭素社会)」でした。
はやりの英語の頭文字言葉で“ごまかす”のではなく、人間味のある日本語で語ってもらえないかな・・と思ってしまいました。
私自身、一市民として、どんな街で暮らしたいかという思いは持っています。
次号から、そんな思いを形にする“まちづくり”を数回に分けて語ってみたいと考えています。