今後の建設需要(8)
2020.08.17
九州を襲った今回の豪雨で、球磨川流域は多くの犠牲者、損害を出しました。
民主党政権時代にダム建設が中止された川辺川は、この球磨川の上流に位置します。
熊本県の蒲島知事は、今回の被害を受けて「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。非常に悔やまれる」と述べています。
あの当時、国民の多くは民主党の掲げた「コンクリートから人へ」に賛同していました。
蒲島知事は、その流れに乗って川辺川ダムの建設反対を掲げて当選し、現在に至っています。
ダム建設中止の公約を支持したのは熊本県民なので、その点で知事を責めることはできません。
しかし「費用が多額でできなかった」は、言い逃れです。
川辺川ダムのコストは4000億円、便益は5200億円程度と見込まれていました。
しかも、中止までに既に2800億円が支出されていました。
単純計算ですが、残りの1200億円をかければ5200億円程度の経済効果が得られたはずとなります。
知事は、ダムの代わりに「ダムによらない治水」を掲げましたが、こちらの費用が掛かりすぎて、どの策も中途半端に終わり、今回の事態をもたらしました。
「ダムによらない治水」としての具体策は、遊水池、放水路、堤防を高く+広げることなどがありますが、数兆円の費用がかかり、しかも、立ち退く住居の範囲は広範囲に及ぶと言われています。
河川の流水量を調整するには、上流側に貯水施設を作る方法が最も有効であることは誰が考えても分かります。
かつ、一定の貯水量を確保するには、谷合にダムを設ける方法が最も安価であることも明白です。
ただし、ダムが満杯になっても増水することが考えられるので、脇へ水を逃がす放水路を併せて作ることが必要となります。
「ダムによらない治水」という格好の良い言葉に飛びつく候補者と、それに惑わされた選挙民という構図は各地で起きています。
どの地域にもいえることですが、知名度とか経歴、はては見た目で、技術&経済音痴の首長を選んでしまう例は枚挙に暇はありません。
さらに言えば、候補者一人を見て選ぶのではなく、候補者が有能な参謀となるブレーンを持っているか、どのような組織構想を持っているかで選ぶ必要があります。
地方政治といえども、しょせん一人で動かせるものではないからです。
有能なブレーン機構と機動的に動ける現場組織を構築・運営できるリーダーを選ぶべきなのです。
そのためには、選挙期間の延長や幅広い選挙活動ができるような公選法の改正が必要です。