これまでの経済、これからの経済(15): 最終回

2020.11.15


前回はマクロの話をしましたので、最終回はミクロの話で締めくくります。
飲食業を経営している知人の話では、一時は80%減になった売上高が30%減ぐらいには回復してきたということです。
しかし、そこで売上回復は停滞し、それ以上向上する兆しがないということです。
「コロナ特別融資で一息ついたけど、それも残高が減っていく一方で気が気じゃない」と危機感がいっぱいの様子。
つまり、以前の売上70%では黒字にならないということです。
 
彼の経営は、それまで続いた好調な売上が固定費を大きくしてしまっていました。
そこをコロナウィルスに直撃され、脆さを露呈してしまったわけです。
ですが、今回のウィルス禍は、近未来の市場変化を先取りして加速させただけです。
ゆえに、収束しても市場が元の姿に戻ることはなく、大きな変化の時代が来ると思うべきでしょう。
ということは、彼の経営には、業態を根本から変えるような戦略が必要ということになります。
 
しかし、この知人は、本メルマガの8/31号で言及した「戦略投資」を行う余裕などまったくないよと嘆きます。
私は、「君は、戦略投資というものを誤解しているよ」と言い、さらに続けました。
「戦略投資=売上拡大は短絡的な解釈だよ、そうではなく、必要な利益確保のための投資だよ。会計学的に言えば『総資本経常利益率』の向上ということかな」
 
ところが、私の話をさえぎって、彼は言いました。
「あなたの言っていること、よくわからないよ。学校で教わらなかったし・・」
それを聞いてハタと気付きました。
「そうだ、学校の勉強って、こんな時、役に立たないよな・・」ということに、です。
 
「学校に行ったら先生の言うことを聞け」
と親から言われた記憶を持つ方は多いでしょうし、ご自分のお子さんに、今でもそう言われている方もいるかもしれません。
私は、それが間違っていたと言うつもりはありません。
貧しかった日本が先進国になった原動力は製造業の力です。
それを支えたのは、正確な工場ラインの稼働であり、労働者の一糸乱れぬ働き方でした。
だから、先生の言うことを聞いて、秩序ある行動様式を身に付け社会に出ることが大事だったのです。
「先生の言うことを聞け」は、それなりの効果があったのです。
 
しかし、時代は大きな転換点に来ています。
私の考えだと、その大転換点は2025年ですが、新型コロナウィルスがその時期を早めました。
ゆえに、転換するのは「いま!」になったのです。
 
この大転換の時代に必要なのは「協調性のある人材」ではなく「飛び抜けた人材」です。
しかし、今の学校教育の中で先生の言うことだけを聞いていても、飛び抜けた人材になれるはずはなく、中年になる頃にはリストラ要員になるだけでしょう。
 
ならば、企業は、今の学校教育からはみ出している中から人材を発掘しなければならないということになります。
しかも、はみ出し方に条件を付けてはいけないのです。
「よし、はみ出し人材を探そう」と思っても、「上にはみ出すのは良いが、横や下ではダメだ」となりがちですから、難しいのです。
そうした既成概念抜きに人を見出す能力を持つ人材が“経営側に”欲しいのです。
つまり、経営トップは、役員人事から見直す必要があるのです。
 
最後に一言。
日本では、未だに「学校に行ったら先生の言うことを聞け」というような20世紀型の教育方針を信じている親が多いように思います。
今の学校、登校拒否をするぐらいのお子さんのほうが、見込みがあるかもしれませんよ。
 
(予告)
本シリーズはいったん終わりにしますが、大転換の曲がり角を曲がった世界の話を、次のシリーズでお送りする予定です。