生産性の向上(その2)

2022.08.17

第1回で述べたように、生産性の計算式は以下のように単純です。
・生産性=GDP(国民総生産)/労働の総投入量(=労働人口×一人当たりの労働時間)
つまり「働き方改革」で休日が増え、残業を減らしても、GDPを現状維持できれば生産性は向上するわけです。
 
これを一企業で考えてみましょう。
働く時間が減っても売り上げが維持できれば、この企業の生産性は「向上した」といえます。
こんな企業が多ければ、日本全体の生産性は向上するわけです。
これは小学校の算数の問題ですね。
 
企業にとっては、売り上げ維持の中で残業代が減れば利益が向上するので、良いことです。
ですが、残業代が減った労働者は収入減となり憂鬱になります。
なんのことはありません。
これでは、労働者の収益の一部が企業利益に変わっただけです。
「ならば、基本給を上げて残業代の減った分を補填すれば良いだろう」という声が聞こえてきそうです。
たしかにそうですが、企業は、「そう言われてもね・・」と、どうしても基本給を上げることには及び腰です。
利益が落ちた時に基本給を下げることが難しく、かつ人員整理も難しいからです。
企業側の自由度を上げる工夫が必要になるわけです。
 
もう少し考えてみましょう。
売上高の維持と生産性の向上を両立させるには、労働の総投入量を減らせばよいわけです。
ところが、労働の総投入量=労働人口×一人当たりの労働時間です。
つまり、生産性の計算には、時間当たりの給料は無関係なのです。
これが、労働者が生産性に関心を持てない要因のひとつになっているといえます。
ということは、生産性の計算式に「時間当たりの報酬」を組み込めば関心を高める効果があるのではないでしょうか。
 
弊社では、労働の総投入量を「総コスト」に変え、個人単位の報酬(給料ではありません)と労働時間、さらに労働の質を表す指標とをリンクさせて生産性を割り出しています。
この結果を見積単価に反映させるようにして、企業収益を維持しながら各人の意識を上げるようにしています。
 
生産性の向上には、デジタル化や仕事の仕組みを変えるなどの抜本的な対策が必要ですが、働く個人のモチベーションも欠かせない要素といえます。
しかし、前述したように生産性の計算には労働報酬が入っていません。
企業は、この関係性の希薄さを真剣に考えないといけないのではないでしょうか。
 
例外はありますが、時短は進んでいるようです。
「良いことじゃないか」と言いたいのですが、人々の表情が明るくなったとは言えません。
かえってサービス残業が増えたとか、仕事の能率が落ちたとかのマイナスの声もあちこちで聞かれます。
日本は、どうも良い方向に向かっているとは言えない雰囲気に包まれているようです。
この雰囲気を変えるためには、生産性向上の果実を賃金報酬の引き上げに繋げることが重要になってきます。
それには、生産性の向上を人件費以外のコスト削減につなげるコスト管理の改革が必要です。
次回、そのことについて考えてみたいと思います。