水商売からビジネスを学ぶ(その7)
2025.03.03
水商売の店を始めて2年目の暮れ、突然、水商売を取り締まる「風営法」が強化されました。
夜11時以降の酒類のみの提供および女性による接待の禁止です。
現在も、「夜10時以降、18歳未満の者に客を接待させる」ことは禁止されています。
(接待者を女性だけに限定していないのは、時代ですね)
この規制は強力に実施され、本当に夜11時過ぎになると、私のお店にも警官が回ってきて店内を見回りました。
さすがに“ビビった”近所の水商売のお店は、軒並み夜11時で閉店しました。
少しでも違反があると警察から警告が来て、度重なると営業停止という厳しさでした。
夜の繁華街は11時以降、火が消えたようになりました。
私のお店も同様でしたが、私は、この規制を逆手に取ることを考えました。
11時前にホステスを帰し、そこから業態を変えたのです。
私のバーテン助手を兼務していた一番古い女の子(この言い方を許してください)にはカウンター外での相手はさせず、服装も変えバーテン専業としました。
そして母の協力を得て、軽食の提供を始めたのです。
カレーライスやチャーハン、スパゲティ、おにぎりとみそ汁などの簡単なメニューを用意し、11時以降は、お酒と軽食の店にしました。
強化された風営法では、夜11時以降、お酒が主体の提供は禁止されましたが、「食事+お酒」の提供はOKだったのです。
しかし、競合店が出ることを想定し、他がマネできない奥の手を用意しました。
お米は新潟の米農家の親類から自家米のコシヒカリを仕入れ、味噌は知り合いの工場から直仕入するなど、徹底して本物の提供にこだわりました。
仕込みは母が行い、それを私ともう一人の女の子が引き継ぎ、提供するお店に変えたのです。
そうなってどうなったか。
他の水商売のお店は夜11時に閉まりますが、それで物足らないお客様を連れて、他店のホステスさんが私のお店に来るようになったのです。
彼女たちは、ウチのホステスではなくお客様ですから、連れてきたお客の相手をしても違法にはなりません。
私は、懇意にしていた喫茶店からコーヒーの回数券を買い、彼らが店を出るとき、ホステスに「ありがとう。これを使って」と、そっと渡したのです。
他店のホステスたちは、11時前から、入れ代わり立ち代わり私のお店に軽食を食べに来るようになりました。
そして、お酒も飲みます。
もちろん、彼女等のお客を連れてです。
私は、つくづく「男ってバカだな」って思いました。
馴染みになったホステスに至っては、店に入るなり、私にそっと「きょうは、何が余ってる?」と聞きます。
私が「ちょっと、カレーを作りすぎちゃって・・」と言うと、「まかせなさい」とウィンクして、連れてきたお客に「私、カレーが食べたい」と甘えた声で言います。
酔いが回っているお客は「いいよ、いいよ・・」と呂律の回らない口調で「バーテンさん、オレにも・・」なんて、いい格好をしたがる。
私は「ありがとうございます」と大きな声を上げ、安いカクテルを一つ「お口直しです」と言って出します。
中には、さらに良い格好を見せたいのか、「バーテンさんもお腹が減ってんだろう。好きなものを食べてよ」と羽振りの良さをアピールするお客もいました。
勿論、その分もお客様の支払いの中に“しっかり”と乗せていただきましたが・・
つまり、厳格になった風営法を逆手に取ったことで、店の売上は倍増、しかも自店のホステスは11時に返すので、人件費は下がる。
胸中ひそかに「笑いが止まらないな」と“ほくそ笑んで”いました。
いえ、決して、ほくそ笑んでいたわけではありません。
一家の生活費や自分の学費だけでなく、大学生になった弟、高校生と中学生の妹たち、合わせて4人の学費や小遣いもこの店の収益で賄っていたのです。
それこそ、必死の商売を行っていたことで、このような逆転発想が出てきたのです。
悪い事態が起きても、逆に考えれば良いことに転換できることが多いし、逆に良いことの裏には必ず悪いことが潜んでいます。
それに備えるという考えは、この時代に養われたように思います。
そして、その悪いことは、“必ず”起きてくるのです。
その話は次号で。