建設雑感:賃金引き上げと歩切り (2)

2013.11.29

「労務賃金引き上げ問題と歩切り」の続きを送る。
地方発注機関の過半で「歩切り」が横行しているが、この現実をマスコミは全く報道しない。
実は、国民の意識からすれば「歩切り=値引き」で、良いことなのである。
だから、マスコミは発注者を断罪しないのである。

一方、労務単価の15%上げも、一般マスコミは完全に無視である。
国民の関心が全くないからである。
当然、民間発注者も無関心である。
私が仕事や付き合いで関係している民間発注者に聞いても、全く考慮する考えがない。
公共工事でも、そもそも「歩切り」を行う発注者の意識には入っていないであろう。

結論として、「労務単価の15%上げ」は実効の乏しい政策といえる。
そもそも価格とは、需要と供給の関係で決まるものである。
その唯一の例外が公共工事であり、発注者による統制で価格が決まっていた。
しかし、統制を支えていたのは「指名競争入札」と「談合」の両輪である。
つまり、発注者が徹底的に競争を制限してきたからであり、受注側に十分な利益が保証されてきたからである。
その両輪が機能しにくくなった現在、発注者による価格統制も効かなくなってきたのは必然である。
「労務単価の15%上げ」も価格統制の範疇である以上、効果は薄いのが当然である。

資材価格や専門工事価格の上昇によって、ゼネコンの利益は圧迫を受けている。
「労務単価の15%上げ」程度で補填できるはずもなく、各地で不調が相次いでいる。
これから、「歩切り」を行う発注者の仕事は敬遠される傾向が強まるであろう。

公共工事も上限拘束性を撤廃し自由市場にしていくしか手はないように思えるが、財政状況の厳しい発注者にはハードルが高い。
建設会社としては、是々非々で案件の中身と価格のバランスを取っていくしかない。
民間工事では当たり前のことなので、難しいことではないが・・・