これからの中小企業の経営(7)
2024.07.01
前シリーズで「経営者と従業員の意識のズレ」を書きましたが、こうした意識や考えのズレがあらゆるところに現れる時代になっています。
ネットで、IT企業の若い経営者による以下の発信を見かけました。
「skypeやzoomの会議で済むのに、クライアントから直接会って話をと言われると、イラっとする」
なるほどと思いますが、「リアルな直接会話の良さもあるけどな」とも思うのですが・・
「それは年寄りの感傷だ」と言われそうですが、ネット会議では、常にリアル感や緊張感の無さを感じてしまうのです。
それは、通信で生ずるタイムラグによる会話や意識のズレ、およびディスプレイ画面の平板さにあると思っています。
「それが年寄りになった証拠なんだよ」と言われてしまうと、話はここで終わってしまいますが、物理的にもネット会議には危うさが付きまといます。
それは、IT技術が発達途上の技術だからです。
本メルマガで何度も書いていますが、コンピュータメーカーでのSEが私の社会人としてのスタートでしたから、建設会社に転職してからも、コンピュータは完全に私の一部となっていました。
自分で開発したプログラムを使って建築設計や現場管理を行ったことで、大きな成果を上げることができました。
そうした経験から、企業全体のシステム構築に携わってきましたし、CADや3DCGは、日本では最初と思えるくらいの早い時期に使ってきましたから、私はIT信奉者です。
しかし、若い頃、必ず実現すると思っていた技術のうち実現したのは2割ぐらいです。
例えば、今のような2次元のディスプレイ画面に表現される「疑似3D」ではなく、本当に空中に立体像が現れ、それが動き、自由に扱える立体ディスプレイは実現できていません。
円筒のガラスの筒の中に立体像を映し出す「ホログラム」は、50年以上も前に実用化され、我々は大学で実際に使っていました。
しかし、円筒の中にしか像は投影できず、また動かすことはできませんでした。
研究室の仲間と「20年か30年もすれば実現するかな」と話していましたが、50年以上経っても実現の目途はまったく立っていません。
ネットの速度向上もカメの歩みのごとくです。
ですから、ZOOMなどのネット会議では、通信のタイムラグに自分の感覚や意識が狂わされてしまうのです。
会議内容が連絡や説明を聞くだけなら良いのですが、真剣な討議は無理だなと思うのです。
先ほどの若いIT企業の経営者などは、そうしたことを感じないのでしょうか。
「化石年代の“じいさん”の寝言なんて聞いてられねえよ」と言われることを覚悟して書いていますが、正直な感想です。
50年前の夢が叶えられる日は必ず来ると信じていますが、進歩の遅さには苛立っています。
ウクライナにおけるドローン兵器の進歩に見られるように、軍事システムは採算度外視ができるため、驚くような進歩を見せます。
50年前に担当した軍事システムも、現代の民間システム以上の性能でした。
天文学的な予算がつぎ込まれていましたから当然です。
しかし、民間システムは倍々ゲームでみんなが使うことでしか採算が向上せず進歩も遅いです。
その使い方、使われかた、そして使わせ方のバランスの取れた進歩が大事なのです。
今の政府は、このスパイラル型の進歩の仕組みが分かっていません。
あの“素人”デジタル大臣がドヤ顔で威張っているようではお先真っ暗ですね。