中小企業の経営(1)
2014.09.30
前回の「人を育てるシリーズ」の中で、私の経営者としての失敗談をお話ししました。
直接原因は、拡大策の破綻です。
その時の心理を分析してみると、最初は「奢り」でしたが、やがて、「後ろに下がることへの恐怖」が強くなりました。
直接原因は、拡大策の破綻です。
その時の心理を分析してみると、最初は「奢り」でしたが、やがて、「後ろに下がることへの恐怖」が強くなりました。
ある経営者の方から、「経営者が自らを戒めなくてはならない意識」は、「見栄」「奢り」「傲慢」「焦り」「恐怖」だと聞かされていました。
しかし、まさに自分がこの通りの心理をたどり、経営危機に陥っていきました。
その愚は犯さないことで、今は堅実な経営を心がけています。
でも、考えてしまうのです。
分かっていながら、どうして、このような心理に陥っていったかをです。
当たり前のことですが、経営者としての未熟さであり、その自覚の薄さにあったと思うのです。
中小企業の経営とは、職人技の習得に似ていると思います。
天賦の才が備わっている天才経営者は、その才のみで大きなビジネスを起こし、一気に事業拡大を果たしていきます。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ 、ジェフ・ベゾス、フレッド・スミスなどの創業者がそうです。
日本でも、松下幸之助、本田宗一郎などがおり、最近では、孫正義、三木谷浩史などがあげられます。
彼等のことを書いた本は山ほど出版されていますが、タイガー・ウッズや青木功の本を読んでもゴルフがうまくならないように、いかにそれらの本を読んでも、さっぱり経営の参考になりません。
また、ネットの世界では、「私は○○で1億円儲けた」的な本やブログ類がたくさんありますが、これまた参考になりません。
たまたま運に恵まれたり、その人独特のカンが当たってみたいな、宝くじ的商売だからです。
そんな中で「参考になるかな」と思ったサイトの記事に出会いました。
今号は、この記事を紹介します。
nikkei BPnet:日経BPオールジャンルまとめ読みサイトの2014年8月25日号に載った記事です。
原文のまま掲載しますので、まずは読んでみてください。
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中小企業の経営者が実践で培ってきた独自のノウハウを、各回ひとつずつ紹介する「社長の処方箋」。
今回登場するのは群馬県のばね専業メーカー、中里スプリングの中里良一社長。
20人規模の町工場でありながら、全国47都道府県に1,600社以上の取引先を持ち、その型破りなマネジメント手法に全国から取材や公演の依頼が相次ぐ。
「名物社長」という言葉がこれほど似会う人もいないだろう。
中里社長が語る経営のヒントとは。
【規模を大きくすれば肉厚が薄くなる】
35年くらい前から、社員の数はずっと28人までに抑えている。
でも、会社って普通にやっていたら大きくなってしまうものだよ。
すぐに「人が足らない」「場所が狭い」「設備が足らない」と言って、大きくすればさらに成長すると思っている経営者が多い。
けれど、それは錯覚なんだよね。
それは風船を膨らませている状態で、肉厚が薄くなっているということに気がつかない。
だから、景気が悪くなると社員を減らしてパンクする会社が多い。
町工場は大きくしないことが技術であり、勝つためのレジスタンスだと思う。
わかりやすく言えば、20人の会社と200人の会社は何が違うかということ。
売り上げも利益も10倍になるかもしれない。
でも、社員の幸せが10倍違うか、経営者の給料が10倍違うかといったら、そんなことはない。
大きくするということは、それだけ付加価値がない経営をしたがるということになる。
特徴がなくても、会社が大きくなれば競争力が増すというのは錯覚だよ。
ある程度大きくなったら大企業に吸収されるか、使い捨てで潰されるかどちらかひとつ。
塵は塵。
小さな会社は小さな会社として存在していることに価値がある。
「塵は積もれば山となる」という言葉は誰でも知っているよね。
でも実際、塵は積もったら何になるか。
ゴミだよね。
まとめてポイ。
それと同じことで、弱い会社はいくら積もって図体を大きくしても強くはなれない。
大企業をのぞいたら、生き残れるのは小さくて個性のある町工場だよ。
【中小企業はアイドルとファンの関係】
社員の数を28人以下と決めたのは、父から会社の危機を聞かされて、この街に帰ってきて少し経った26歳くらいの頃。
28という数字に決めた理由は3つ。
子どもの頃に好きだった鉄人28号の28と、チャンバラが好きで「次郎長三國志」の人数から取った28人。
いい加減な理由だけど、3つ目が本当の理由で、ぼくが自分の欠点を書き出したら28個あった。
それで「ぼくの欠点を補ってくれるのが皆の役割だ」と社員に言って、定員を28人って決めたの。
社員をそう捉えれば、経営者だって気持ちよく給料を払えるじゃない。
経営者だからって、社員に「使ってやっている」という感覚を持つのも、社員に「働いてやっている」と思われるのも嫌なんだよ。
中小企業と従業員の関係というのはアイドルとファンの関係と同じ。
第三者から見たら「あんなのどこがいいんだ」って思うじゃない。
町工場も同じこと。
中小企業なんて経営者も社員も欠点だらけなんだから、その分お互い好きになる努力をしなきゃいけない。
経営者が上から目線になったり、社員が被害者意識を持つようになったら終わり。
経営者の欠点を見て、自分はそこに惹かれたと思える人は残ればいいし、大したことないと思う奴は出ていけばいいんだよ。