これからの商売(5):夢想生中継

2017.11.17


今回の表題を見て、すぐに分かった方は、相当なネット通ですね。
「夢想生中継」とは、2016年9月に立ち上げた中国のプラットフォームのことです。
プラットフォーム商売といえば、すぐに「ユーチューブ」を思い浮かべる方も多いと思います。
ツイッターやフェースブックも、広い意味ではこの範疇に入るかと思います。
つまり、主催者は白紙の「お絵かき帳」だけを用意して、あとは視聴者が自分勝手に書き込むというものです。
その上で、その書き込みや画像を誰でも見ることが出来て、良いとか悪いとか、なんでも言えるという仕組みです。
読者のみなさんは、ツイッターやフェースブックが中国では事実上禁止されていることはご存知のことと思います。
政権への批判を恐れて、当局が厳しく検問しているわけです。
そのことが、中国独自のプラットフォーム商売がどんどん出てくる土壌になっています。
「夢想生中継」もその一つなのですが、大きな特徴は2つです。
一つは「生中継」ということです。
録画してあとからネットに載せるのではなく、「いま、この瞬間」を送るサイトだということです。
もうひとつは、視聴者が気に入った生中継の送り手(パフォーマーといいます)にバーチャルプレゼントを送るという仕組みです。
このバーチャルプレゼントは、あくまでもバーチャルであって実際のモノではありません。
ゲームの世界の「武器コンテンツ」のようなもので、単なるアイコンに過ぎないのです。
ですが、ネットの世界では、このプレゼントを他の人にあげたり売ったりできるという仕組みになっています。
こうしたバーチャルプレゼントのデザインや動きは複数存在するマネジメント会社が作り、掲載される仕組みになっています。
視聴者は、代金を払ってプレゼントを選択し、気に入ったパフォーマーに送るということです。
支払われた代金の1/3をプラットフォーム会社が取得し、2/3がパフォーマーとマネジメント会社に分配されます。
一見して「バカバカしい」と思うかもしれませんが、この会社、倍々どころか6倍増で売上を伸ばしているとか。
しかし、当然のごとく、怪しい動画のオンパレードになっています。
生中継ゆえ、事前の検閲なく動画はアップされてしまいます。
プラットフォーム会社は24時間体制で監視を続け、わいせつ画像などは5秒で止めていると豪語していますが、実態は危ないものとなっています。
このサイトで“カネが稼げる”ということで、投稿内容がどんどん過激になってくるのは必然の成り行きです。
それも”わいせつ”画像が大半を占めるということも当然でしょう。
ついには「赤ちゃんづくり生中継」と称する画像がアップされました。
この時は5秒では止まらず、視聴者の通報で慌てて停止されましたが、すでにあちこちキャプチャーされ拡散されてしまったということです。
動画の内容はご想像にお任せするしかありませんが、この他にも、飲酒運転の生中継なども配信されていて、危ないサイトNo.1になりつつあるようです。
中国当局も取締りに乗り出したようですが、ネット社会の闇は中国全土にどんどん広まっていく様相を呈しています。
さて、こうした商売を「これからの商売」として勧めるわけにはいきませんが、「これからの商売」の要素を幾つも含んでいることは否定できません。
思えば、ビデオデッキが爆発的に普及した影の立役者は「アダルトビデオ」でした。
軍事産業とピンク産業がテクノロジーを進化させてきたことは事実です。
ともに道義的には問題がありますが、「反道徳がビジネスになること」を否定できません。
商売とは悩ましいものです。