中小企業の経営(4):大きな手を打つ

2015.02.28

本年は戦後70年です。
サラリーマンの方は勿論、大半の経営者も戦前・戦中の日本を体験していないわけです。
実体験を直接聞ける相手である親や元経営者の方も、どんどん減っています。
 
安部首相の持論である「戦後レジームからの脱却」、政治的には反発も招いていますが、
経済の分野では、「戦後からの脱却」はどんどん進行し、市場の変化という形で表面に現れています。
それなのに、この変化に目を向けず、旧態依然たる経営を続けている企業が多すぎるのです。
それでも、過去の蓄えのある企業は、しばらくは生きていけます。
しかし、蓄えもやがて底をつきます。
 
私の会社を事例に説明しましょう。
創業後7年間は増収増益を続け、売上で8倍、従業員数で13倍になりました。
しかし、そこで経営成績が横ばいになりました。
新規に起こした2つの事業がかなり利益を生んでいましたから、既存事業は完全に下降線に入っていたわけです。
 
ここで打つべき手は明解です。
既存事業を縮小し、あるいは大幅な改編をし、新規事業へ主力を移すべきです。
そんなこと、当時も分かっていました。
しかし、実行できなかったのです。
 
人員整理などをせずに、新規事業の利益で既存事業の赤字を埋めていけば、社員も頑張ってくれて、そのうち業績も回復するであろうと、甘い考えでいたのです。
 
さて、こんな経営がどのくらい続けられるでしょうか。
私の場合は4年でした。
横ばいに入って5年目に、一気に崩れ、大赤字を出しました。
7年で築き上げた業績の蓄えが4年で消えたわけです。
数億円の利益が完全に消えてしまったのです。
授業料にしては高すぎると思いますが、全責任は経営者の自分にあります。
 
しかも、4年間の放置のつけは大きく、それから7年間、業績は低迷を続け、倒産寸前の状態にまで追い込まれました。
 
しかし、業績が低迷を続ける間、底を打つまでは耐えぬこうと決心して、リストラを続けました。
首切りはしませんでしたが、企業が低迷状態になると、どんどん人は辞めていきます。
「こんなものなんだな」と、寂しい思いはしましたが、結果はオーライなのです。
 
業績が悪化し続ける中で企業を維持する経験は貴重な体験となりました。
そして、その間、反転の機会を伺い、反転させる手を考えていました。
その答えが、表題の「大きな手を打つ」ということだったのです。
 
次号から、「小さな会社の大きな手」と表題を変えて、続きの話をしたいと思います。