今後の建設需要(10)
2020.11.15
建設業法の改正に合わせる形で「工期ダンピング」がやり玉に上がっています。
しかし「適正工期」なる言葉を明確に定義することは困難です。
いや、あえて「出来っこない」と言っておきます。
日建連は「著しく短い工期による請負契約には、官民を問わず、国交省が発注者に対して勧告して欲しい」と要請しましたが、「著しく短い」をどう判定するのでしょうか。
もちろん、発注者が建設会社に対し「短工期をむりやり飲ませた」という証拠が上がれば、勧告も意味を持つでしょう。
しかし、それが事実でも、果たして請け負った会社が訴えるでしょうか。
私だったら訴えません。
本当に自社で無理なら、そもそも断ります。
請け負っておいて訴えるなど、とてもできるわけがありません。
かつて問題になった構造計算の不正の動機は、鉄筋材料費の削減ではなく、極端に短い工期を実現するための鉄筋量の削減だったと言われ、施工会社や指導したコンサル会社の関与が浮上しました。
この施工会社は、外部から現場を見えないようにして、その工法を隠していました。
しかし、その追求は、施工会社が倒産するなどして、結局うやむやになってしまいました。
あの時、追求し切れなかった国交省や日建連が、いまさら「著しく短い工期・・」と言うことに強い違和感を覚えます。
不正行為で短くした工期は、検査の厳格化で暴くことができるはずです。
また、様々な事情で、突貫とならざるを得ない工事もあります。
この場合は、相応の割増賃金を払うことで働く職人さんたちが納得すればOKだと思うのです。
私の経験でも、短工期の中で大晦日にコンクリート打設を行うという工程を組まざるを得ないことがありました。
職人さんたちから「冗談じゃない!」と拒否されると思いましたが、「倍の日当を出すから」と提案したら、みな喜んで、大晦日まで続く年末の徹夜作業に参加してくれました。
こうした行為も「著しく短い」と判定されるのでしょうか。
私は、現場代人時代に「工程圧縮技法」と名付けた工期短縮(というより、納期に間に合わせる)方法を開発し、実際に工期短縮を行っていました。
日建連の解釈だと、この技法も不正となるのでしょうか。
今後、BIMが施工にまで及び、やがてロボット施工の時代が来て、短工期は当然となるでしょう。
建設産業は、官民をあげ、そうした短工期施工を目指しているのではないでしょうか。
そもそも「著しく短い工期」は、元請けや顧客の利益重視のツケを下請けに負わせることで起きます。
日建連も国交省も、空虚な言葉遊びは止めて、未だに産業界にはびこる上下関係の文化を変えることに注力して欲しいと思います。
ゼネコンから仕事を請ける立場の各種団体も「専門工事会社にしわよせが・・」と言うだけで、その立場の弱さの是正には及び腰です。
こうした上下関係の文化は、建設業界だけではない、日本の産業全体の問題です。
しかし、「文化」ですから、変革は容易なことではできません。
東大を頂点と考える日本人の学歴意識がある限り、変わることはないでしょう。