外国人受け入れで犯罪大国になる?(2)

2019.08.31

「外国人をこれ以上受け入れると犯罪大国になる」と主張する人たちがいます。
欧米のテロ事件の報道に接すると、その悲惨な状況と恐怖に、そう叫びたくなる気持ちはわかりますが、こうした短絡思考は危険です。
 
かつて、米国で逆のことが起きました。
先の戦争中、米国の日系人たちは「反米行動に走る危険が大きい」として、財産を没収された上、強制収容所に隔離されました。
米国籍を持つ二世たちも同様の扱いを受けました。
いかに戦争中とはいえ、理不尽だったということで、1988年レーガン大統領が通称「日系アメリカ人補償法」に署名し、連邦議会が日系アメリカ人へ謝罪し、生存者への損害賠償を行いました。
その後に追加賠償も行われ、1999年に最後の支払が実施され賠償は終わりました。
 
ここで言いたいのは、そうした補償のことではなく、次の2点です。
まず1点目。
日系人の隔離は、日本とアメリカが戦争になったことで始まりました。
当時の米国人の多くが「日系人が手引きして日本軍が米国に上陸してくる、あるいは破壊活動を行う」と思ったのです。
米国のマスコミも国民を煽る報道を繰り広げました。
「日本は、天皇ヒロヒトをホワイトハウスの椅子に座らせようとしている」と一面に書いた新聞も現れました。
当時の日本で、そんなことを考えている人は一人もいなかったと断言しても良いくらいなのに、海の向こうではそんな話が“まことしやかに”流布していたのです。
その声に押される格好で、当時の米国政府が日系人の隔離を決めたのです。
時のルーズベルト大統領が、有色人種嫌いだったと言われていますので、そんなことも影響したのかもしれません。
その話は、現在のトランプ大統領にも通じる話で、アメリカの深い病根ともいえます。
 
2点目は、いったん移民を敵視する方向に動けば、その修復に長い時間がかかるということです。
日系人の隔離が始まったのは1942年ですから、その修復には50年以上の歳月がかかったことになります。
 
この愚を犯してはならないのですが、今の日本には危うい点が随所に見られます。
外国人を単なる労働力としてではなく、日本人と同等の存在として処遇する企業も増えてきていますが、まだまだ少数派です。
低賃金の労働力という本音が根強いのが実情です。
 
送り出すほうの国々にも問題はあります。
概ね、人権に対する意識が低い国が多く、闇ブローカーが暗躍する土壌になっています。
技能実習生の大量脱走の裏には、そうしたこともあると思います。
ただ、こうした問題への対処は企業には荷が重く、日本政府が送り出す側の国と連携して解決策を作っていくしかありません。
 
日本で働く外国人が増えていけば、統計的に犯罪に走る者も増えてきます。
だが、それを「だから・・」とか「仕方ない」とするのではなく、世界一治安が良いとする日本の社会の一員として受け入れる仕組みを強化していくべきです。
彼らは日本での就労に希望を持って来日してきたのであり、また、来ようとしているのです。
そうした思いを受け止め、健全な働きや生活を送れるようにすることは、雇う側の企業責任です。
弊社も、外国人を貴重な戦力として積極的に受け入れる企業として成長していきたいと願っています。