経済政策の通信簿(その3)
2021.07.16
これまで2回に渡って、デフレからの脱却ができなかった日本の30年間を政府の経済政策の面から眺めてきました。
この30年間で、実に16人もの首相が登場しました(安倍晋三氏は2回なので、実質15人)が、合格点を与えたのは2人だけでした。
読者のみなさまは、第二次安倍内閣はアベノミクスで大規模な財政出動と公共投資増を行ったではないか、安倍首相はもっと評価されるべきではないかと言われるかもしれません。
しかし、統計データを調べてみると、安倍内閣での公共投資は、その前の民主党政権時代から、それほど増えてはいないのです。
逆に、消費税率を5%から8%、さらに10%へと増税しました。
その上、橋本政権や小泉政権と同様の「構造改革」を進めました。
こうした政策は、プライマリーバランス達成という財務省のシナリオに沿った「緊縮財政」政策に他なりません。
経済は、ある意味で単純な算数の世界です。
「需要>供給」ならばインフレになり、「需要<供給」であればデフレということになります。
ならば、それぞれ反対に誘導する政策を行えば良いということになります。
この30年間、日本はデフレ状態が続いてきたわけです。
ならば、供給より需要を増やす政策を行うべきです。
具体的には、大幅な公共事業投資を呼び水とし、投資減税、法人税減税、消費税減税で需要を喚起する政策を大胆に進めるべきなのです。
ところが、小渕、麻生の2つの政権以外は、政府支出を削減し、消費税を増税するという「緊縮財政」を推進してきたのです。
その残念な結果が「韓国にも負けた日本」と言われるまでになったのです。
しかし、日本の基礎技術は、まだ世界最高レベルで、韓国の及ぶところではありません。
負け犬になる必要はなく、政府が「積極財政」を進めていけば未来は開けるはずです。
ただ、ひとつだけ問題があります。
それは、建設業界を始めとする産業界が呪文のように唱えている「生産性の向上」です。
「生産性の向上」とは供給力をアップさせることを意味します。
需要が停滞したままで生産性が向上すると「需要<供給」となり、デフレがさらに進行してしまいます。
インフレ経済になることに備えた生産性向上活動は良いのですが、その前に政府は、大規模な公共投資や研究投資を実施して需要を喚起する必要があります。
「それではインフレになる」という評論家がいますが、そもそもインフレにすることが目的です。
インフレになったところで、準備した生産性向上政策を徹底的に進めればよいのです。
こうした経済理論を理解し、大胆な経済政策を実行できる人が次の首相になることを期待します。