空母化する「いずも」「かが」は戦力となるのか(1)

2023.10.16

日本は、離島の防衛力強化を目的に、ヘリコプター空母の「いずも」と「かが」の2艦を軽空母に改修中です。
この改修の目的は、当然、海洋進出を進める中国海軍への対処です。
では、両艦は果たして中国海軍に対抗する戦力に成り得るのでしょうか。
まず、両艦の大きさを確認します。
基準排水量26,000トン、長さ248m×幅38mですから、軽空母としては大きいレベルです。
米国最大の空母ジェネラル・フォードと比較してみましょう。
同空母は、基準排水量101,600トン、長さ333m×幅78mの大きさです。
排水量において3.9倍、甲板の広さは約2.7倍となりますから、巨大すぎて、ちょっと比較にならない規模ですね。
では、中国の空母とはどうでしょうか。
中国海軍は、現在3隻の空母を擁していますが、数年後には4隻体制になると言われています。
しかし、1番艦の「遼寧」はウクライナから海上カジノにするといって買った艦を改造したもので、実戦に使えるかどうかという代物です。
2番艦の「山東」は国産ですが、スキージャンプ方式の戦闘能力の劣る空母です。
3番艦の「福建」は、最新の電磁カタパルトを備えた米国型の空母ですが、進水しただけで、完成まではかなり時間がかかりそうです。
しかも、米国でも故障に悩まされている電磁カタパルトを、原子力エンジンを持たない「福建」が運用できるのか、世界の軍事専門家から疑問視されています。
つまり、現時点で「いずも」型が相対するとしたら「山東」だけとなります。
その「山東」のスペックは以下のとおりです。
基準排水量56,000トン、長さ315.5m×幅38m(飛行甲板75.5m)ですから、大きさだけは、米空母より少し劣る程度となります。
次に搭載可能な戦闘機などの固定翼機の数ですが、「いずも」型は10機と言われています。
米空母ジェネラル・フォードは75機ですが、これは甲板上にも並べた総数です。
「いずも」型も、同様に甲板にも並べれば16機と言われています。
甲板の広さの比率からいえば、もっと搭載できそうですが、そうはいきません。
航空母艦は、搭載機の格納だけでなく戦闘に必要な様々な装備にスペースを取られますし、艦の乗組員以外に搭乗員や整備要員、戦闘指揮要員などの配置場所や居住スペースも必要です。
かつて、米空母内部を見学したことがありますが、最下層に広がる居住区は、食堂や雑貨屋、床屋まであり、まるで本物の町にいると錯覚するくらいの広さでした。
一方、中国の「山東」の搭載機数は36機と「いずも」型の倍を超えます。
「そんなに差があって大丈夫なのか」という声が聞こえて来そうですが、以下の2点で「いずも」型が優位にあるといえます。
まず、「いずも」型が搭載する“F35B”は第5世代のステルス戦闘機ですし、垂直離着陸が可能です。
同機は、短時間での発艦が可能で、すぐに上空で戦闘態勢の編隊を組むことができます。
それに対し「山東」に搭載される“J15”は第4世代の戦闘機でステルスではありません。
さらにスキージャンプ方式での発艦は連続発艦が難しいという難点があり、燃料やミサイルなどの搭載量も最大量の50~60%と言われています。
編隊を組むための必要時間で「いずも」型に大きく劣ります。
唯一、行動範囲が“F35B”の900kmに対し、“J15”は3000kmと優位に立っています。
しかし、防衛に徹する日本に対し、攻撃側の中国機の行動範囲の広さは優位とはいえません。
日本空母は離島防衛が主任務ですから、日本本土から遠く離れた海域で戦闘するわけではありません。
ゆえに、この行動範囲で十分であり、むしろ搭載する燃料の少なさは戦闘では有利に働きます。
さらに、本土の基地からは、より強力な“F35A”の援軍がやってきます。
その到着までの時間が稼げればよいわけです。
この続きは次回に。