純粋な軍事の話(1)
2018.12.07
前章の論調とは矛盾した話であるが、日本と中国はお互いを仮想敵国としている。
もちろん、中国にとっての最大の仮想敵国は米国であるが、その米国と軍事同盟を結んでいる日本を同等の仮想敵国とみなしている。
今の日本人は、日本は平和国家だと自認しているが、中国はそうは見ていない。
無理もない。1894年の日清戦争で戦火を交えてから1945年まで、50年も戦争をしてきた間なのである。
現代でも、いったん密月状態になっても、ちょっとした事で一気に冷え込むことを何度も経験している。
そうしたように、政治と軍事は切り離せない関係であるが、ものごとを単純化してみるために、純粋に軍事的な側面で少し論じてみたいと思った。
ずいぶん以前から、中国は「第一列島線」「第二列島線」と称する防衛ラインを設定し、その内側に米軍を入れない戦略を実行に移してきている。
「第一列島線」は日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海を内側に入れる線であり、「第二列島線」は、やはり日本から小笠原諸島、グアムを結び、ニューギニアまで延びるラインである。
ともに日本列島全体を防衛線としているわけで、失礼な話であり、日本国民としては「ふざんけんじゃねえ」と言いたい話である。
だが、そうした感情を抜きに考えねばならないのが軍事戦略である。
この「第一列島線」は、日本にとっては重大な危機ラインであり、「第二列島線」までが中国の手に落ちることは、完全に日本が中国の支配下に置かれることを意味する。
つまり、日本としては、「第一列島線」より中国寄りのところに防衛ラインを引かなければならないのである。
具体的には、北海道から佐渡島、対馬、竹島、南西諸島、沖縄、尖閣を含む先島諸島を結ぶ領海ラインとなる。
この内側に中国およびロシアの侵入を許さないことである。
しかし現実は、両国による領海・領空侵犯は常態化しており、いつ軍事衝突が起きてもおかしくはない事態なのである。
このことを念頭に置いた実戦体系の防衛力の整備が急務といえる。
防衛ラインの大半が海洋であるため、海軍力および空軍力が重視されているが、量において日本は圧倒的に不利な状況であり、質においても急速にその差は無くなってきている。
かろうじて、軍人の質において勝っているといえるが、それに頼ったのでは戦前の二の舞である。
日米軍事同盟が大きな後ろ盾ではあるが、緒戦を戦い抜くだけの軍事力の整備は欠かせない。
この話、次回以降、しばらく続けていきます。