中国の思考法を学び、対処する(4)
2020.11.02
中国は、米国を追い落とし、世界の中心に座るという野望を、ますますむき出しにしています。
まあ、今さら驚くこともないのですが、こうした世界制覇の野望が、逆に中国の落とし穴になる危険性を、どこまで考えているのでしょうか。
米国は、中国を侵略することなど考えてはいません。
もちろん、現代の日本も大陸侵攻の意志など毛ほどもありません。
それなのに、中国は、第一列島線だけでなく、第二、第三列島線と、ハワイを射程に収めるほどに戦線を拡大しようとしています。
当の中国に言わせれば、この線は中国を守る防衛ラインだということです。
でも、これって、どこかで聞いた主張です。
そうです。
戦前の日本が主張した大東亜共栄圏構想とそっくりなのです。
資源に乏しい日本を守るためには、満州や東南アジア、南西太平洋までを傘下に収めなければならないとした戦略です。
それで結果はどうなったかですが、誰もが知っている惨めな失敗です。
軍事戦略として、最前線を自国からなるべく遠くに置こうという考えは理にかなっています。
しかし同時に、限りある戦力を広く薄く分散することになり、かつ物資補給などの兵站が伸びてしまうという欠点を抱えます。
敵対国からしたら、薄く伸び切り、補給も乏しい防衛ラインの弱いところに、自らは戦力を集中して攻撃すれば良いということになります。
実際、米国のこうした戦略の前に、戦前の日本は前線を次々に破られ敗戦へと追い込まれました。
今の中国が戦前の日本より大きいとしても、拡大戦略を続けることは、戦前の日本の二の舞になることは明白です。
それでも、習近平主席は「そんなことは知っているが、そうはならない」とする確固たる戦略を持っているのでしょうか。
自身は、かの孫子をも凌ぐ兵法家だと自負しているのでしょうか。
中国が推し進めている一帯一路は、こうした防衛ラインの拡大に他なりません。
たしかに、一帯一路に参加している国の政府は中国のカネ漬けから抜けられないようですが、住民の間では、急速に中国の評判が落ち始めています。
この5月には、アフリカ・ザンビアの中国企業の工場が焼き討ちされ、中国人幹部3人の惨殺死体が発見されました。
彼らは、現地で「わが物顔で振る舞う」と反感を受けていたと報道されています。
ザンビア政府は、国連人権理事会で香港国家安全維持法への支持を表明しましたが、国民レベルでは急速に中国への反感が広がっています。
こうした反中運動がアフリカの各地で広がり出しています。
中国のカネにひざまずく政府と違い、民衆の対中嫌悪感は、マグマのように広がってきているのです。
一帯一路が掲げる「互恵対等の関係」などは口だけで、実態は「中国による植民地化」であることに国民が気づき出したのです。
ところが、当の中国は、一帯一路の理想と現実の乖離が世界から厳しく見られているという失敗をあまり気にしていないようです。
一応「搾取ではない」との宣伝活動は行っていますが、寛大さや誠実さで現地の人心を掌握し、長期的な関係を築こうという姿勢はまったく見られません。
次回、この問題をもう少し掘り下げてみます。