軍隊という組織(2)

2022.06.30

前回、軍隊組織は、上から軍、軍団、師団、旅団、連隊、大隊、中隊、小隊、分隊となっていると書きました。
ロシア軍の編成には詳しくないのですが、情報を分析する限り、ほぼ同じと解釈して良いようです。
米国の分析によると、ロシア陸軍は、BOG(大隊戦術群)を基本単位として軍事作戦を行っていると見られています。
 
今回のウクライナ侵攻においては、約120の大隊戦闘部隊が投入されていると言われています。
普通、大隊の規模は400~600名ぐらいですが、ロシア軍は800名程度と推定されます。
そうなると、全体で10万人程度の兵力となります。
読者のみなさまは「えっ、20万人じゃないの?」と思われるかもしれません。
たしかに総勢はそのくらいですが、全員を最前線に投入したのでは、戦争は継続できません。
後方から大砲を撃つ砲兵や弾薬や食料を輸送する兵站部隊、橋を掛けたりする工兵隊、傷病兵の移送や治療を担う衛生兵や医療班も大量に必要です。
 
話は逸れますが、中国の三国志における最大の戦い「赤壁の戦い」をご存知の方は多いでしょう。
あのとき、曹操率いる魏軍は80万と言われています。
しかし、中国の歴史話は誇張が多いので、実際は多くとも40万程度ではないかと思われます。
しかも、そのうち戦闘部隊は20万ほどでしょう。
つまり、半数ぐらいということです。
こうした歴史の分析と、先に述べたロシア軍の戦闘部隊10万人は、だいたい一致します。
 
欧米の報道によると、侵攻6週目で、120の大隊のうち30が任務から外れたということです。
つまり、25%の兵力を失ったということになります。
軍事的には、戦力の50%を失う状態は「壊滅」状態であり、まとまった戦闘は不可能になります。
30%の損傷でも「撤退」状態となり、戦闘継続は難しくなります。
多少の兵員補充はしているでしょうが、その後も前線での損耗は続いていますから、25%の損耗が事実なら、ロシア軍の侵攻が膠着状態になっているのは明らかです。
 
ロシアは作戦を変更して東部のドンバスを落とすことに集中しているようですが、たとえ成功しても、維持は難しく、膠着状態が続くと思われます。
侵攻した軍隊の損傷率が上がり作戦遂行が難しくなった場合は、部隊組織を再編し、それに応じた作戦変更が欠かせないはずです。
しかし、それが難しいロシア軍の事情があるようです。
それは、次回で。