日本流の中国との付き合い方を(その6):米中貿易戦争の裏側
2019.06.03
今回の“ちゃぶ台返し”は、いつものトランプ大統領ではなく、習近平主席のほうである。
もちろん、中国が米国の要求を飲まなければ「制裁強化するぞ」と脅しを掛けたのはトランプ大統領のほうである。
経済力をバックに急速に軍事力を高めてきた中国に対する警戒感は、共和党のみならず民主党でも高まってきている。
次期大統領選を念頭に、ここで中国への対応を強化することは民主党の一部からの支持も期待できると、トランプ大統領は考えたのである。
それに対し、中国は、民主党の有力候補として名前が上がっているバイデン元副大統領に目を付けた。
「中国は競争相手ではない」と公言するバイデン氏が大統領になることを中国は夢見て、この夢を実現するべく対米工作を活発化させたのである。
これに激怒したトランプ大統領は、一気に対中強硬策を打ち出した。
中国は、予想以上の強硬策に、妥協せざるを得ないと判断して、その寸前までいった。
上機嫌のトランプ大統領は、「近々、良い知らせがある」とまで発言していた。
それが一転して対立激化となったのは、習近平主席が妥協を拒否したからである。
それは、外交的な事情より国内的な事情を優先しなければならなかったことが理由である。
今の中国は習近平主席の下で一枚岩になっているとは言えない状況である。
今は沈黙している共青団派も上海派も、習主席の「終身主席」を阻止することでは一致している。
ここで米国の圧力に屈する形で貿易戦争の妥結を図れば、国内の敵から「弱腰」と批判される。
習近平主席は身を切る覚悟で“ちゃぶ台返し”を指示したのである。
それが突然の指示だったことは、全権大使として渡米した劉鶴副首相の発言からも明らかである。
劉副首相は、習近平主席の中学時代の同級生で、もともとは経済学者である。
経済オンチと言えるくらい経済に弱い習近平主席が全面的に頼りにしている存在である。
その副首相が「自分にはもう出来ることがない」と語り、「あとは首脳同士の会談で」と発言した。
米中首脳の強硬策の激突の中で、圧死したような状態なのである。
問題は、この後である。
日本で開催される6月のG20で、米中首脳会談が開かれることが予想されるが、妥結は難しいと見られている。
仮に、米国による関税25%が中国からの全輸入品に実施されると、米国政府には約1250億ドル(12.5兆円)もの税収増がもたらされることになる。
「おカネ大好き」トランプ大統領にとっては「Good」な結果なのである。
その後の予測を次号に続けます。