これまでの経済、これからの経済(13):アフターコロナからウィズコロナへ
2020.09.16
新型コロナウィルスが消える日は来ない。
ゆえに、このウィルスと同居して生きるしかないとする意見が増えてきました。
結果、アフターコロナという言葉に代わり、ウィズコロナという言葉が多く使われるようになってきました。
しかし、多くの企業は、そんな言葉遊びをしている余裕などなく、どう生きるかの死活問題です。
今回のコロナ対策の特別融資で、かなりの資金が調達できた企業も多いと思います。
前号では「これほど借り手有利な融資は当面ないので、目一杯借りるべき」と主張しました。
しかし、「カネは魔物」です。
「やれやれ」と安堵したとたん経営姿勢が緩むのは人間心理ですから仕方ないとしても、借金は麻薬という意識を持ち続けることが大事です。
しかも、今回の特別融資は、より毒性の強い麻薬です。
弊社は、当面の資金繰りに必要はありませんでしたが、かなりの額の融資を受けることにしました。
“かなり”という曖昧な表現をしましたが、「無理なく返済を続けられる」金額という歯止めは掛けました。
かつ、大事なのは、これからです。
年初の事業計画で予定していなかった資金調達です。
当然、短期および中期の事業計画の全面的な見直しが必要です。
主題は、本業による利益を減らすことなく今回の資金をどう活用するかの戦略立案になります。
ある程度の規模の会社になると、幹部たちに戦略立案を任せる会社が多いようですが、今回だけは、経営トップ自らがリーダーとなり、全責任を負った戦略を立案すべきです。
戦略がなかったり、あっても実効性の薄いものであったりすると、いつの間にかカネは消えていくものです。
そのような戦略が立てられないのであれば借りるべきではなく、借りたとしたら、当面使わず塩漬けにすべきでしょう。
幸いなことに、今回の特別融資は、3年間無利子という特典が付いています。
つまり、金庫に塩漬けにしていても、経済は当面デフレ傾向になりますから、損失が出ません。
(もっとも、「それでは意味が無い」と言えばそうなのですが・・)
こんなことを言うのも、かつて未熟だった私が、そのような失敗をしたことがあるからです。
当時のメインバンクの口車に乗り、不要な大きな資金を調達してしまったのです。
結果として、大きな借金だけが残り、倒産の縁まで追い込まれました。
「そんなこと、分かりきったことではないか」と、読者のみなさまに笑われると思いますが、それがカネの怖さというものです。
本題に戻ります。
資金調達はできても、売上の下落が予想される会社もあるでしょう。
ある程度、赤字補てんに使うのは仕方ないとしても、どこくらいの額で補填を止めるか、その手段と期限を明確に決めなくてはなりません。
そうでないと、ザルの水の如くカネは抜け落ちていきます。
それ以外に考えられることは、財務体質の強化、事業基盤の強化、組織体制の強化といった強化投資ですが、経営者が最も考えるべきことは「戦略投資」です。
戦略投資とは、一言で言えば、自社を一段と高みへ引き上げる投資であり、新商品開発、営業分野およびエリアの拡大、海外進出などが、その具体策です。
しかし、最も難しく、かつリスクが高いのが戦略投資です。
よって、有期かつ具体的な目標を立てる必要があります。
今回の特別融資の多くは、10年返済となっています。
であるならば、「10年後、投資額の倍のリターンを得る」などの明示的目標が欲しいです。
かつ、その目標に順調に向かっているかどうかを、毎年度(できれば四半期毎)フォローする必要があります。
具体的には、「純資産額の増加」を貸借対照表でフォローしていきます。
要するに、経営トップ自らが公認会計士になって自社を監査していくのです。
「このコロナ禍の中でも成長できるのが本物の企業」ということを後押しするのが、今回の特別融資だと思ってください。