今後の建設需要(6):BIM元年??

2020.03.17

近年の建設業界のトレンドを探すと、以下の2項目に集約される感があります。
「働き方改革」、「BIMへの期待」
この2つは関連しているのですが、関連効果はまったく出ていません。
BIMが本当に「利益を生む道具」になり、休日が取れ、残業がなくなる日がいつ来るのかとなると、誰も明確な答えを持っていません。
 
それで、国交省などは、手っ取り早い「働き方改革」を先行させようと、「現場の土日閉鎖」などの取り組みをやっきになって進めようとしています。
しかし、今の「働き方改革」は「休むこと」ばかりが強調され、現場の実態にはまったく合っていません。
それは、そうです。
BIMが真の効果を生み出す日は遠く、そこまでの莫大な投資と時間を考えると絶望的な状況です。
それなのに、国交省は「25年度に原則適用」などと、いつもの「ぶち上げ」を行うばかりです。
戦略・戦術なき目標をぶち上げる姿は、旧日本軍の大本営そっくりです。
かつて「天長節(天皇誕生日)までにニューデリーを占拠する」とぶち上げ、結果として大量の戦死者を出したインパール作戦を思い浮かべてしまいました。
 
いまのBIMの状況は、30年以上昔の、CADが始まった頃とよく似ています。
私の在籍していた会社でも、「これで設計の手間は半減する」などという声が飛び交い、経営者側もその気になっていました。
当時、CAD普及の最前線にいた私ですが、「3次元設計は軌道に乗らない」ことを痛感していました。
2次元設計に比べて、その手間が5倍以上になっていたからです。
その事情は、今でもそう変わらず、2次元設計が主流のままです。
 
現在、弊社が手掛けている設計事業では3次元設計を行っています。
しかし、それなりのシステム投資が必要であり、それを縦横に使いこなす優秀な人材が欠かせません。
正直言って、採算ベースに乗っているとは言えない状況です。
ですから、単純な採算ではなく、手作業では出来ない設計分析が出来ることに価値を置いています。
その意味での生産性は非常に高いものが見込めます。
 
つまり、従来の仕事の延長線上では、BIMはお荷物になるだけの代物です。
将来への投資として割り切れる会社は良いですが、劇的な効果を期待している会社は、当面、情報収集だけに留めたほうが無難と思います。
 
業界紙などが何をもって「BIM元年」というのか知りませんが、私の実感では「夜明け前」です。