2024年への展望(2):日本経済が上りきれない理由

2024.03.05


本メルマガの2022年8月号~223年5月号で9回に渡って「曲がり角の先の経済を考えてみよう」というシリーズを掲載しました。
表題を列記すると、下記になります。
1.SBGマジック
2.円安との戦い
3.円安は悪いこと?
4.稲森氏の言葉
5.企業トップの責務
6.事業承継
7~9.日本復活のカギは半導体(1)~(3)
ここで言っている「曲がり角の先」が、前項(これからの中小企業の経営)でも述べている「2025年を回った先」であることは、もうお分かりですね。
半導体の話の中で、「現在、量産可能なのは7ナノまでだが、すぐに5ナノになる」と述べ、さらに「国策として政府が主導するラピダスは『2027年に2ナノの量産を』と言っているが、1年遅い」と述べましたが、この意味も分かると思います。
このように日本は何もかも遅いのです。
日本国内では、「みんなが遅い」から大きな影響は出ないのですが、世界という標準で見ると危ないのです。
この国内における「横並び意識」が、気持ち良い“ぬるまゆ“となり、多くの企業が「茹でガエル」になっているのです。
これが、日本経済が上りきれない大きな理由です。
今年も春闘という名のイベント(?)が始まりました。
いつものように、大企業代表の経団連と労働組合代表の連合の初協議(顔合わせ?)が儀式として始まりました。
この儀式は、私が社会人となった1970年代のはるか前から続いていますが、その始まりを経験した方でご存命の方は、ほとんどいらっしゃらないでしょう。
この初協議のTV画面を見ていると「古式ゆかしき・・」というフレーズが聞こえてきそうです。
連合は、今年の方針として「最低賃金を1600円/時以上、賃上げ率6%以上」を掲げ、経団連は、それに呼応する声明を出しています。
連合は中小企業に対しても「5%以上」をと強気の態度を前面に出しています。
もっとも、連合に所属している中小企業は、従業員が100名以上の比較的大きな企業ばかりです。
資金繰りと人集めに苦労している零細企業にとっては、連合は“よその世界”の存在です。
連合・芳野会長にそうした認識はあるのでしょうか。
2024年10月から、従業員51名以上の企業には、月額賃金8万8千円以上のパートタイマーなどに社会保険加入が義務づけられます。
天引額と同額を企業が負担することを考えると、企業にとっては厳しい義務です。
結果として事業縮小、従業員減らしに向かう中小企業が増えることが懸念されます。
それだけの収益向上が期待できない場合、私でもそうするでしょう。
企業の存続を第一に考えればやむを得ない処置です。
岸田首相は、企業の「賃金を上げる難しさ」を、まるで理解していないようです。
この先も財務省主導の経済運営が続くようでは、日本経済は上るどころか腰折れするでしょう。
そこに気付いて方向転換できる人なら、首相は誰でも良いと考えます。
もちろん、岸田首相が方向転換するなら、支持しますがね。