建設会社に “のしかかる” 3つの課題(1)

2023.06.20

3月決算企業の決算発表が出揃いましたが、営業利益率は以下の如くです。
資本金10億円以上 6.2%
1~10億円  4.3%
1億円未満  3.0%
 
零細になるほど利益を上げることが厳しい状況が分かります。
一方、大手企業の財務内容は向上していますが、少々いびつになっています。
財務省のデータですが、「10億円以上の企業」の1997年~2018年(つまり、20年間)の経営数字の変化を以下に記します(1997年度を100とした2018年度の指数で表現しています)。
売上高107、経常利益319、内部留保297、配当金620、給与96 設備投資96 平均役員給与132
 
売上高は横ばい、利益と内部留保は3倍、配当金は6倍強、給与と設備投資額は減少という結果です。
近年、経済学者や経済評論家の言っていることを裏付ける数字です。
 
これらの数字をどう見るかは、立ち位置によって異なるでしょう。
企業側は、デフレで売上高がほとんど上がらない中、必死にコスト削減に励んだ結果だと言いたいでしょう。
労働側からいえば、「やはり給与は下がっている。内部留保を給与支給に回せ」と言うでしょう。
マスコミは「日本企業の生産性は低いままだ」と言うでしょうが、経常利益の3.19倍は「生産性向上の賜物」と言えるかもしれません。
そうでないとすれば、「下請けたたき」の効果でしょうか。
 
しかも、その利益は、内部留保の積み上げと配当金の瀑上げにしか行かず、給与は下がっています。
(役員給与は上がっていますが・・)
一番の懸念は、設備投資が下がっていることです。
設備投資は将来の利益を創る原資となるものです。
従業員給与の減少もそうですが、経営者が将来への夢を描けず、設備投資をせず、自社防衛に縮こまっている様子がわかる数字です。
この先も暗い話題に事欠かないのが現状ですから、内部留保はさらに積み上がると思われます。
 
建設企業に対しては、前号で述べた3つの課題「インボイス対応」、「残業時間規制」、「BIM/CIMへの取り組み」が重くのしかかってきます。
その上、社会保険料のアップは続き、消費税などの各種税金のアップも政府は目論んでいます。
岸田首相は明らかに財務省主導の路線に乗っていますが、外国に対してだけは気前よくバラマキを行っています。
広島G7で気分が高揚し、「外交こそが自分の得点を上げる要素だ」と勢いづいている様子で、海外ヘのバラマキが増えているように感じます。
もちろん、国際貢献にケチを付ける気はありませんが、同じくらい国内への投資にも意欲を見せて欲しいものだと思います。
 
当然、こうした財源は国債発行が主になるしかありませんが、経済政策に不安がある岸田首相は財務省に強く出ることができません。
さらに、安倍元首相のような積極財政を唱える政治家が今はほとんどいない現状も成長のブレーキになっています。
次号からは、この3つの課題について解説していこうと思っています。