靖国参拝を論ずる 第4回:東京裁判(その2)

2014.07.21

簡単にこれまでの復習をしたいと思います。

靖国問題に影を落とし続けているのは、極東軍事裁判(通称、東京裁判)でA級戦犯とされた当時の指導者たちが合祀されていることである。
中韓は、常套文句として「A級戦犯が祀られている靖国神社を参拝することは、先の戦争を肯定し、戦後秩序を否定する行為だ」と非難している。
さらに、中国の習近平主席は「日本は、ポツダム宣言に謳(うた)われた戦後秩序を破壊している」と非難しているが、これは認識間違いである。
ポツダム宣言は「戦争の終結と戦後処理」の方法を記したものであり、戦後秩序を規定したのはサンフランシスコ講和条約である。
そして、このサンフランシスコ講和条約の第11条には、以下のように書かれている。

『Article 11』
Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan. The power to grant clemency, to reduce sentences and to parole with respect to such prisoners may not be exercised except on the decision of the Government or Governments which imposed the sentence in each instance, and on the recommendation of Japan. In the case of persons sentenced by the International Military Tribunal for the Far
East, such power may not be exercised except on the decision of a majority of the Governments represented on the Tribunal, and on the recommendation of Japan.

外務省訳の日本語によると、以下のようになっている。

『第十一条』
日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮
出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日
本国の勧告に基くの外、行使することができない。

さて、今号では、この解釈について詳しく解説していこうと思っている。

非常に難解な文章であるが、以下のように解釈できる。
まず、「日本国で拘禁されている日本国民」とは、東京裁判等で有罪とされた全ての戦犯のことである。
それで、以下のような平易な文章に書きなおしてみた。

「日本国は、東京裁判をはじめとする“戦争犯罪法廷”の諸判決を受諾して刑の執行を行う。ただし、戦犯の疑いで拘禁されている日本人は、連合国側諸国のうち1ヶ国でも同意すれば釈放が可能である。
かつ、東京裁判で刑を宣告された者(つまりA級戦犯者)に対しては、連合国諸国の過半数の賛成と日本国の勧告があれば、赦免や減刑が出来るものとする」

もっと突っ込んで解釈すれば、戦勝国との交渉によって日本は「東京裁判の判決結果を変えられる」ということである。
しかし、今日に至るまで、日本国がこの交渉を行なったという記録はない。
つまり、国際法上にはなかった「戦争を起こした犯罪」で裁かれたA級戦犯という罪を、公式に破棄できた可能性があったのに、日本政府は、その努力をサボってきたのである。

私には、東條英機らを擁護する気持ちは全くない。
あの戦争を発動した彼等の責任は、法とは無関係にとてつもなく大きい。
だが、A級戦犯という国際法を無視した罪の是正を放棄したことで、日本は、今日に至るまで、いわれなき非難を受け続けているのである。
戦後歴代政権のサボりのつけはあまりにも大きいと言わなければならない。