中国バブルの崩壊(2)

2014.10.31

「中国バブルはいつ弾ける?」とよく聞かれますが、予測が難しい問題です。
今号では、「社会主義市場経済」という特殊な経済の存続を賭けて、現在、習近平政権が行っている微妙な舵取りを解説します。

日本ではほとんどニュースにもならなかったが、習近平主席は9月25日に重要な法案を成立させた。
その法案は、「中央政治局常務委員同志の2度目の教育実践活動の工作法案」という奇妙な名称の法案である。
“中央政治局常務委員”とは、本メルマガに度々登場している中国の最高幹部たち(現在は7名)のことである。
AKB47風に呼ぶと“神7”というわけである。

実は、この法案は、最高幹部7名に対する檄(げき)なのである。
この7名には習近平主席自らも含まれるので、自らへの叱咤激励でもある。
日本では考えられない“奇妙キテレツ”な法案なのである。
そのくらい、習近平主席の危機感は高まっている。

この法案の主旨を簡単に説明すると、
「今の中国は、昨年と変わらず『四風』の危害にさらされ続けている。共産党幹部たちは、強烈な使命感と責任感をもって、中国社会の腐敗に立ち向かえ」という“はっぱ”である。

ここに出てくる『四風』を少し解説する。
1年以上前の2013年6月18日に、習近平主席は中国共産党の「群衆路線教育実践活動工作会議」なる会議を開いたが、ここで提起した4つの問題のことである。
ここで、習近平主席は、こう演説した。

「今の中国社会は、以下の4つに毒されている。それは、形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢主義の『4つの風潮』である。
中国人民を指導すべき共産党員は決してこの風潮に染まってはならない。
しかし、それが今や危機に瀕している。
故に、最高幹部自らが教育に動き、この四風を撲滅せよ」

法案に「中央政治局常務委員同志の2度目の・・」と回数まで書き込んだのは、この理由による。
相当な危機感と言えよう。

中国経済は、様々な面で行き詰っている。
漁業では、乱獲がたたって沿岸漁業は壊滅状態。
それで韓国や日本の近海に繰り出し、違法操業を繰り返す。
宮古島や五島列島、小笠原諸島で中国による違法なサンゴ密漁が繰り返されているが、他国の領海やEZなどおかまいなく違法を繰り返す漁船に対し、中国政府は知らん顔。
取り締まれば漁民の不満の矛先が政府に向かうからである。

市場原理を無視した建築ラッシュは東北部や内陸部にまで及び、住む人のいない高層マンション群がウィルスのように広がっていく。
「社会主義市場経済」の当然の帰結といえるが、習近平政権はこの経済の否定ができない。

果たして、この奇妙な名前の法案でバブル崩壊を防げるのでしょうか。
次号では、バブル発生とその崩壊の原理を説明し、日本が失敗した原因を分析し、はたして中国が崩壊を防げるのか否かを解説したいと思います。