民主主義の脆さ(その3)

2022.08.02

民主主義は、個人の権利を最大限に尊重する政治形態である以上、個人の主張のぶつかり合いが避けられないという宿命的弱点を抱えています。
そのぶつかり合いが社会のいたるところで発生し、収拾がつかなくなると、最も安易な解決法が採られるようになります。
つまり、発言力に長けた一部の者の声(それは、いつも暴力的な声となります)に先導された民衆が暴力的な解決策を求め、それが現実化していくのです。
ほぼ確実に、そのような「衆愚政治」に陥り民主主義はあえなく頓挫するのです。
古代ギリシャの民主主義も、フランス革命によって起きた中世民主主義もそのように頓挫しました。
 
そうした民主主義の脆さを補うには、「法治国家」としての骨格を整えることにあります。
つまり、ルールづくりです。
今年の大河ドラマは鎌倉時代がテーマですが、北条氏による政治が軌道に乗ったのは、三代執権の北条泰時の時代です。
泰時が「御成敗式目」という法律を制定し、その運用を徹底したことによって、国が安定したのです。
 
現代でも、ルールづくりのあり方が国としての活力を左右することは同じです。
今の日本は、憲法だけでなく多くの法律(ルール)が、不安定さを増す国際情勢や経済停滞が続く国内の諸問題に適合しなくなっています。
すべてを一度に変えることは無理でも、例えば「10年で変える工程表」を作り、実行することはできるでしょう。
岸田首相は、こうしたことにリーダーシップを発揮して欲しいと思います。
「デジタル田園都市国家構想」なる意味不明な構想ではなく、「進化したテクノロジーで既存のルールを変える」というような、誰もが理解しやすい構想を掲げて、即実行することが大事です。
 
上記の理由で、少しだけ注目している政治家がいます。
デジタル副大臣と内閣府副大臣を兼務している小林史明氏です。
小林氏は、「テクノロジーの社会実装によりフェアで多様な社会を実現する」という政治信条を掲げています。
39歳という若さですが、「法令4万件の一括見直し」などという大々的な法改正の必要性を訴えています。
次号で、彼の主張するところを少し解説したいと思います。