これからの中小企業の経営(6)
2024.06.03
「創業企業が10年生き延びられる・・」を続けます。
前回取り上げた100円ショップのダイソーが苦境に陥っているとの情報があります。
そもそも100円ショップはデフレ時代の象徴ともいえる商売であり、インフレ経済になると続けられない商売でした。
そのことは、故矢野社長も仰っていました。
当初90円の仕入れ価格では赤字で倒産必至でしたが、次第に下げてもらい、やがて60円になり、その差益30円が高い付加価値となって急成長しました。
ところが、デフレからインフレの時代に変わったことで、当然、仕入れ価格が上がってきて粗利の減少を招いています。
しかし、「100円ショップ」という集客に力を発揮してきた強いネーミングが足かせになり、「売値を100円に固定せざるを得ない」という負の側面が際立つ結果となっています。
このように、経済の転換期には、それまでの強みが一転して弱みになることがおきます。
今は、そうした大きな転換期にあたり、様々な価値観が逆転することを念頭に置く必要があります。
「ならば、具体的にはどうすれば良い?」という質問を受けますが、答えは単純です。
「売値(単価)を上げなさい」です。
それをせずに(あるいは、できずに)、原価削減に走り、質を落とすことが最悪な手です。
すでに飲食業界でそれが起きていて、「最近、あの店の味、落ちたね」という声があちこちから聞こえてきます。
建設業の場合は、より深刻になります。
そもそも受注金額が高額なため、数%の値上げでもユーザー側から見ると「こんなに高くなるの!」と受け止められてしまいます。
公共工事の場合は、自治体の担当者のふところが痛むわけではなく、しかも国が後押ししているので、割と順調に受け止められています。
しかし、民間工事の場合は、そうはいきません。
住宅の場合だと、お客の負担が百万円単位で増えることになるので、そう簡単に受け入れられません。
ビル建築だと、千万円単位から億円単位の負担増となるため、発注企業の資金繰りに影響してきます。
要するに、長く続いたデフレ時代の“つけ”が一気にのしかかってきているわけです。
こうした時代の一番の特効薬は減税なのですが、岸田政権は真逆の増税路線をひた走っています。
その批判がこたえたのか「定額減税」で支持率を上げようとしたようですが、あまりにも姑息な手段を弄したために、処理する企業側の負担に悲鳴が上がっています。
現政権下での経済復興は無理と判断するしかありませんが、企業としては嘆いているわけにはいきません。
むしろ、前へ進む体制を再整備することが必須です。
しかし、素人の新人を増やすことは勧められません。
人手不足が続く今、零細な中小企業が優秀な新人を確保できる確率はほとんどありません。
大量に流されるコマーシャルに踊らされて人材募集会社を使っても、彼らの餌食になるだけです。
そんなことに資金を使うより、現有社員の給与を上げることや有効な教育、さらにはインフラ整備に資金を使うべきです。
そのための資金調達は経営者の一番の仕事です。
弊社も同様なので、金融機関との協議を重ねています。
その中で、以下のことを耳にしました。
3年に渡って大盤振る舞いを続けてきたコロナ融資ですが、この6月末まで延期されました。
この背景には、用意した予算を使い切れず、かなりの余りが出たことがあります。
役所というところは、予算オーバーはもちろんダメだが、予算を大きく余すこともダメなのです。
民間でも、大企業の管理部門には同じような傾向があります。
かつて管理職の時代に、1割以上、部の予算を節約したところ、経理部から「マイナスも5%以内にしてもらわないと困る」と言われたことがあります。
それと同じですね。
ところで、この余った(?)コロナ融資を使い切りたい当局は、6月末までに融資を行うべく金融機関への要請を強めています。
しかし、経営状況が悪化している企業への融資ではなく、経営状態の良い企業への融資を勧めよということです。
もちろん、公式にこんなことは言いません。
我々中小企業は、こうした裏の情報も組み合わせて経営を行う時代なんだと認識すべきですね。