あまりにも鈍感な建設産業

2015.10.30

1ヶ月前の本メルマガで、私は「国民の不信感の強さに鈍感な建設産業」というタイトルで、国民の不信の目に対する業界の鈍感さを指摘しました。
その後すぐに、横浜のマンションでの杭工事の不正が発覚したわけです。
予言をしたわけではありません。
私は、40年間、様々な立場から建設の仕事をしてきました。
しかし、業界の内側しか見ていない建設産業の姿に強く危機感を抱いていたが故の警告でした。

今回の問題でも、パークシティLaLa横浜のマンションが傾いているという指摘が寄せられたのは、昨年の11月です。
それなのに、きちんとした調査もせずに苦情を無視し続けていたわけです。
1年近く経ってようやく問題の存在を認めましたが、記者会見で旭化成建材の副社長が「傾いたのはこの1件だけ」と発言するなど、当事者の危機意識の欠如には耳を疑いました。

その後の報道で、杭の偽装は他県にも及び、「私もやった」と発言する施工者が現れたりと、底なしの様相を見せ始めています。
10月29日現在で偽装が明らかになった物件は全部で4件になっています。
今後も偽装発覚が増えていくのかどうか。
どこかで調査完了(実際は、打ち切り?)となる気がしますが、分かりません。

設計や施工経験がお有りの方は、杭の不正がどれほど危険かはよく分かっていますが、同時に、そもそも、多くの建物は過剰気味に設計されているし、国の基準も必要以上に過大だと感じています。
この2つの感情の狭間が本当の危険だと思うのです。

私も工期や金額が非常に厳しい物件の施工を担当したことがありますが、大きな問題に突き当たった時は、やはり焦ります。
竣工に間に合わなくなる、工事が赤字に陥ってしまうというプレッシャーは相当なものです。
実際にそうなれば、謝ったぐらいではすみません。
工期の遅れは、お客様から損害賠償を請求されるかもしれませんし、赤字になれば、自分の評価は地に落ちます。
それでも平然としていられるような精神の持ち主など、ほぼ皆無でしょう。

技術の未熟さなど、現場監督自らが解決していかなければならない問題も多いですが、多くは施工会社の姿勢であり、リスク管理の問題なのです。
もっと言えば、施主を含めた建設産業が抱えている構造的問題なのです。
姉歯問題から10年、産業界の体質が少しも変わっていないことを露呈した今回の問題。
市場から突きつけられている不信の重さに対し、まだまだ建設産業界は鈍感だと思います。