今後の建設需要(1)
2019.09.17
建設市場とは、人間が社会生活を円滑に、かつ快適に行うためのインフラを整備し、維持するための市場です。
しかし、ある段階に来ると、必然的に新設市場は縮小し、維持修繕市場が拡大してきます。
この市場変化は、建設需要の絶対量を縮小させ、建設不況となり、市場参加者の淘汰の時代に入ります。
ある程度の淘汰が進むと、生き残った企業は一息付けますが、建設市場自体は、低迷状態が続きます。
日本においては「失われた20年」と言われるような時代です。
そうした中、近年、異常気象が常態化し、各地で災害が多発しています。
老朽化し、古い設計思想で造られたインフラでは、こうした災害に対処できなくなり、政府は「国土強靭化」に予算を付けることを決定しました。
さらに、経済の質的変化が新たなインフラを必要とする時代に入ってきました。
建設業界には朗報と言えますが、それを受ける業界の体質は古いままで、過去の愚を繰り返してる有様です。
少し古い話題ですが、鉄骨造の建築に欠かせない高力ボルトが不足し、納期が大幅に遅れているというニュースがありました。
「それならRC(鉄筋コンクリート)造にしよう」という動きが起きましたが、「やれやれ、またか・・」との思いです。
4~5年前、型枠工や鉄筋工が不足し、RC造をS造(鉄骨構造)に変える例が相次ぎました。
今の逆です。
実際、弊社でもRC造で設計したビルをS造に変えた経験がありますが、その時、スタッフと「そのうち、今度は逆になるぞ」と話していました。
今はその通りになってきましたが、同じ思いを抱く方も多いと思います。
だが、「予想が当たった」と喜ぶわけにはいきません。
現状を「バカバカしい」と思いながらも、新たな建設の仕組みを考える毎日です。
しかし、マスコミや評論家諸氏のように原則論を言うだけでは経営は出来ません。
市場の変化を自社のビジネスに照らして分析し、「実際に出来る仕組み」を創り、実践することです。
その結果を基に、近未来の市場を洞察し、顧客との関係を強化し、ともに発展する道を採ることです。
大事なことは、「これから」を冷徹な数字で見て、数字でフォローしていくことです。
ここ数年、業界紙の紙面には、「大手・中堅は史上最高益」という文字が踊っています。
たしかに付き合いのある建設会社の業績は好調なところが多いようです。
アベノミクスの第二の矢の恩恵は、建設業界が最も享受してきたと言っても良いでしょう。
しかし、第三の矢は、的確に当たっているとは言い難い状況です。
この的こそ、アベノミクスの本当の狙いだったはずですから、今後の大きな課題です。
これは、「的を外している」というより、第三の矢の力が弱いことが原因です。
第三の矢とは民間投資の拡大なのですが、民間投資は政府の音頭取りで動くものではありません。
市場が安定的に拡大するとの期待がなければ動きません。
しかし、内外とも経済の不確実性が高まる現状では、この期待が広がらないのです。
建設市場は、公共と民間にまたがる市場です。
従って、公共投資は民間需要を呼び起こす起爆剤であることが必要です。
しかし、公共投資は政治の力で歪められるという構造的弱点を持っています。
さらに、地方、特に市町村行政は経済的にも技術的にも力が弱く、市場の牽引役になれません。
次回は、この解決策を論じ、新たな建設世界の創設を論じたいと思います。