中国の思惑通りにはいかない(その4)
2020.08.17
中国が唱える「社会主義市場経済」とはなんでしょうか。
果たして、経済理論といえるのでしょうか。
無理に解釈すると、「経済は市場の論理で自由活動を原則とするが、その果実は社会主義で平等に分配する」とでもなるのでしょうか。
しかし、本質は「世界中で中国は自由に活動させてもらうが、果実の分配は中国政府が独占的に行う」ということのようです。
市場経済=自由経済といえますが、自由主義と社会主義は真っ向からぶつかり合う概念です。
経済における自由主義の本質は「弱肉強食」の世界です。
最終的に、一握りの成功者がその他大勢を富の力で従える社会となります。
産業革命後の欧州が典型的な例です。
現代でも、米国がそれに近い状態だといえます。
1800年代の欧州が陥った極端な自由主義経済の下で、大半の一般大衆は奴隷的な労働環境と貧困に喘ぎました。
自然発生的に「富の再分配」を求める声が大きくなり、マルクスのような経済理論家が社会主義理論を打ち出し、一気に大衆の支持を集めていきました。
以降、2つの理論はぶつかり会いを続けた結果、一定の妥協点に達し今日に至っています。
欧州は概ね社会主義的、米国は逆に自由主義的な妥協点という違いはありますが。
社会主義を極端化した共産主義は、ソ連において花開いたかに見えましたが、結局、独裁主義へと変貌し、崩壊しました。
ゆえに欧米は、中国も豊かになれば、そのようになると考えたのですが、中国を甘く見すぎていました。
中国は、2500年も前に孫子を始めとする多くの戦略理論を生み出し、磨き上げてきた国です。
欧米各国は、そこを軽視していました。
ゆえに、「社会主義市場経済」なる用語を打ち出した背景を真剣に考えようとせず、いずれ中国は民主化するはずと思いこんだのです。
しかし、ようやく欧米は、中国の意図に気がついてきました。
「社会主義市場経済」なる用語は、欧米に対する煙幕のようなもので、成り立つはずがないことくらい、当の中国は分かっているのです。
実態は、共産党独裁政権が利権を独占的に差配する経済なのです。
しかし、この煙幕の中で世界制覇を目指し推し進めてきた「一帯一路」が、中国の足を引っ張り出しています。
皮肉なものです。
この事態は、独裁者たる習近平主席の力不足が招いたことです。
彼は、孫子の兵法を完全には読み解いていないようです。
あれだけの大国を上意下達だけで動かせると錯覚した傲慢さともいえます。
次回は、この「一帯一路」について、少し解説したいと思います。