これからの近未来経済(3):バクチ化が加速する証券市場

2021.02.15


コロナ禍の効果(?)で世界的に株価の高騰が続いています。
それも当然といえます。
米国FRBや日銀などの中央銀行が、異次元のコロナ対策資金を市場に供給しています。
しかし、コロナ禍で落ち込んでいるリアル市場にその資金を吸収する力はなく、必然的にバクチ場(投資市場)に大量の資金が流れ込む構図になっています。
その資金を狙って、新興企業のIPO(株式初公開)が大盛況の状態です。
昨年、米国で新規に株式上場した会社の調達総額は1800億ドル(18.7兆円)と史上最高額でした。
しかも、すでに、上場後の時価総額は、その何倍にも膨れ上がっています。
例えば、ある民泊紹介サイトですが、日本円で10兆円の時価総額に跳ね上がっています。
トヨタ自動車の時価総額が約22兆円ですから信じられない数字です。
言い方は悪いですが、たかが民泊紹介サイトの企業価値がトヨタの半分近くなんて、「馬鹿げている」とつぶやきたくなりませんか。
 
大量の余剰資金を背景に企業のM&Aも異常なブームになっています。
M&Aによる買収総額は、2020年の下期だけで1.9兆ドル(約200兆円)を記録しています。
投資を仲介する会社のボーナスは、コロナ禍をよそに空前の金額になり、笑いが止まらないようです。
 
この異常な金融ブームを牽引しているのが、SPAC(スパック)と呼ばれる「企業買収だけを目的」とした会社です。
日本では、ソフトバンクグループが先陣を切ってSPACを設立したと聞けば、実態は想像できると思います。
そうです。SPACは抜け殻のように事業実態のない会社です。
 
その仕組みを簡単に説明すると、以下のようになります。
近年、SBG(ソフトバンクグループ)が多額の損失を出したように、新興企業に投資した上で上場させるには大きなリスクが伴います。
そこで、大手ファンドは次のような安全策を考えました。
先にSPACを設立・上場させた上で、目を付けた新興会社を、このSPACに買収させるのです。
すると、この新興会社は自動的に上場会社となり、市場からすぐに資金を集めることが可能になります。
買収初期に、この会社の株を大手の資金で釣り上げておけば、一般投資家が争ってこの会社の株を買います。
後は、もうお分かりと思います。
危険を最小に抑えた上で多額の資金を集める“うまい手”なのです。
投資失敗で痛い目にあったSBG(ソフトバンクグループ)が飛びつくわけも理解できると思います。
 
しかし、読者のみなさまは、もうお気付きだと思いますが、SPACの最大の問題点は、その不透明さ、不明朗さにあります。
次号で、そのことを説明したいと思います。