今後の建設需要(18):まちづくり
2021.08.17
「まちづくり」で私権の調整以上に難しいのが「ファイナンス」です。
公の予算が付く場合は良いのですが、民間の開発事業では自力の資金調達がメインになります。
たとえ補助金が付いても、必要資金には大きく不足する場合が大半です。
ゆえに、銀行などの金融機関に事業計画を持ち込み、融資交渉となるわけです。
そのとき、銀行からは必ず以下の言葉が返ってきます。
「出口戦略は?」
つまり、融資したおカネを「いつ、どのようにして返済してくれますか」という問いです。
銀行の多くは“まちづくり”の目的、意義、将来構想などには無関心です。
ひたすら「回収」のことにしか関心がありません。
でも、銀行としては当然のことなので、怒っても仕方ありません。
要するに、大手企業や実績のあるデベロッパーでもない限り、銀行頼みのファイナンスは成り立たないと思ったほうがよいということです。
自前の土地があっても、土地評価額の5~7割程度が限度でしょう。
都心の1等地ならそれでも開発推進が可能でしょうが、郊外や地方ではそうはいきません。
ベンチャー型の“まちづくり”が進まない最大の要因といえます。
そうなると、考えられるのは金融ファンドの利用です。
たしかに、金融ファンドは銀行のように「出口戦略は?」などと、高飛車な態度は見せません。
だからといって、「有る時払いの催促なし」などと鷹揚にかまえているわけでもありません。
事業の採算性や配当については、銀行以上に厳しいと覚悟する必要があります。
その上、それなりの高いリターンを覚悟しなければなりません。
明確になっているわけではありませんが、配当としては8~15%を期待されます。
かなり厳しい数字ですが、ファンド側も集めた資金への配当が必要であり、リスクを考えれば、高いとはいえません。
しかも、この配当率は契約によって約束されていない場合が多いですから、投資を受ける側が最終的に「配当はできない」と言うことは可能です。
もっとも、それ以降、いっさい相手にされなくなりますから、そちらのリスクのほうが高いかもしれませんが。
米国のファンドマネージャーと交渉したことがありますが、雑談で「配当の期待値は15%だが、実際は12~13%で、損することもある」と話していました。
孫正義氏率いるソフトバンクグループ・ファンドは、大口投資家であるサウジアラビアには6~7%配当を固定値として契約しているといわれています。
となると、15%以上の収益を目指す必要があり、“ばくち”のようなスタートアップ企業の発掘に賭けているわけです。
時間も経費もかかる“まちづくり”への投資などは、まったく孫氏の眼中にないでしょう。
これらの話から分かるように、事業収支こそ最も大切な要素といえます(当然ですが・・)。
ただし、銀行のいうような「出口戦略」という考え方ではダメでしょう。
次回は、そのことを少々論じてみたいと思います。