商品開発のおもしろさ(18):コンピュータの話(その3)
2021.12.16
1950年、現在のコンピュータのアーキテクチュア(基本理論・仕様)となっている「プログラム内蔵方式」の論文が発表されました。
別途に作成するプログラムをコンピュータの主記憶装置に置いて実行するというこの論文は、プログラムを入れ替えることで多種多様な数値算出が可能となることを実証した画期的な論文です。
この著者3名の中にフォン・ノイマンが入っているのですが、EDVAC開発に関して書かれた報告書の「プログラム内蔵方式」に関する文書にはフォン・ノイマンの名前しか書かれていませんでした。
そのため、その後、彼が「プログラム内蔵方式」の考案者であると言われて今日に至っています。
この「ノイマン型コンピュータ」が、現在のほとんどのコンピュータの動作原理となっています。
この論文から、コンピュータが実用になることを最初に証明したのが気象予測の分野ですが、気象予測は、観測結果の入力から予測の計算結果の算出までにかかる時間が、実際の気象が発現する時刻より速くないと意味がない分野です。
当たり前ですね。
雨が降り出してから「きょうは雨が降るでしょう」という天気予報を出したら、「ふざけんな!」と叱られるでしょう。
フォン・ノイマンは、自分自身でマシンを改良してプログラム内蔵方式の効率化に努め、数値予報が実用化できるほどにコンピュータを高速化しました。
しかも、このための気象予測プロジェクトを立ち上げ、その主導にも尽力しました。
彼がコンピュータのハード、ソフトの両面に詳しいだけでなく、数学の非線形流体力学方程式にも詳しいマルチなエキスパートだったから、可能だったことです。
当時の気象学者は電子コンピュータを扱えなかったし、コンピュータ技術者は気象には無知でした。
もし、フォン・ノイマンがいなかったならば、電子コンピュータを用いて数値予報を行うマシンの開発は困難だったと思われ、気象予報プロジェクトも生まれなかったと言われています。
その後、彼が開発したコンピュータを使って低気圧発達の再現に成功するなど、気象予報は飛躍的な発展を遂げました。
1956年には、大気大循環モデルの計算実験に成功し、地球大気の典型的な循環パターンの再現にも成功しました。
こうした成果が、今日の天気予報や地球温暖化の将来予測につながっているのです。
これほどの貢献をしたにも関わらず、フォン・ノイマンはノーベル賞とは無縁でした。
私も、それが不思議でした。
ノーベル賞の対象分野での功績が無かったという説がありますが、決定的な理由とは思われません。
私の推論ですが、彼が、本シリーズ第16回の最後に書いた「人間のふりをした悪魔」と呼ばれたことと関係しているのではと思っています。
その話は次回に。