中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その1)

2022.08.17

これまで、幾度となく「中国経済は破綻する」と言われてきましたが、それらの予測はことごとく外れ、未だに破綻しない状態が続いています。
私も破綻予測派でしたが、自由資本主義の中で育ったせいか、中国のような独裁による「国家資本主義」に対する理解不足があったように思います。
 
ですが、不動産バブルが異様に膨らんでいく中国を眺めていると、「日本のバブルと同じ道をたどっているのでは」との危惧が大きくなってきています。
「いや、日本以上の崩壊になるだろう・・」とすら思えます。
バブルのゴールは破綻ですが、難しいのはバブルが弾ける時期の予測です。
自由主義国と違い、国家がむりやり延命させることが可能な中国では、政治的な要因が大きく絡んでくるため、より難しくなります。
しかし、延命策は延命でしかなく、根本的な解決には繋がりません。
習近平政権は強引なゼロコロナ政策を続けていますが、経済的にはこうした政策が、バブルの延命策を行き詰まりに追い込むことになるでしょう。
そこで、今回から数回に分け、中国経済が末期状態かどうかを論じていきたいと思います。
 
中国政府は経済崩壊を何より恐れています。
崩壊が現実になれば、現在の習近平政権のみならず共産党独裁が崩れるかもしれないからです。
しかし、現政権が相次いで打ち出す政策は支離滅裂、かつ矛盾だらけです。
中央政府は、異常に加熱した不動産バブルに対し、近年、過剰と思えるほどの規制を掛けてきました。
しかし、この規制強化で不動産バブルが崩壊する兆しが強くなってくると、崩壊に歯止めをかけようと、一転して、在庫整理を促すよう不動産市場に対する規制緩和に動き出したのです。
だが、この緩和が逆に不動産市場での投げ売りを呼び、バブル崩壊が早まるとの懸念が強まってくると、地方政府に対し、不動産価格の大きな変動を禁止する「値下げ禁止令」を出すよう圧力を掛けてきたのです。
つまり「不動産在庫は減らせ」、しかし「不動産価格の値下げは許さない」という、市場メカニズムを完全に無視した中央政府の方針のもとで、地方政府も不動産業者も右往左往状態に陥っているのです。
 
現在、中国の不動産業界は空前の在庫余り状態です。
2006年ごろから始まった都市開発の猛ラッシュで、いまや居住可能な住宅は34億人分に膨れ上がっています。
人口14億人の中国の2.5倍近い数で、全国民が2戸ずつ住居を所有してもなお余る計算です。
この歯止めがかからないことも独裁政治の大きな欠陥なのです。
慌てた習近平政権は、2016年に「脱・住宅在庫あまり」を重点政策として打ち出し、不動産開発プロジェクトに歯止めをかけるバブル圧縮政策を次々に打ち出しました。
1990年の日本の「総量規制」とよく似た政策です。
当然、それによって起きた不動産企業のデフォルトの連鎖が中国経済を直撃し、銀行の経営リスクに繋がり始めています。
まさに、日本のバブル崩壊の再現に他なりません。
違うのは、「値下げは許さん」という強権の発動です。
まさに独裁国家でなければできない政策です。
次回に続けます。