曲がり角の先の経済を考えてみよう(4):稲盛氏の言葉

2023.01.10


日銀の黒田総裁の任期は来年の4月8日ですが、それまでは現状の方針を変える気はないようです。
つまり、利上げの判断は「後任者に任せた」ということです。
 
では、誰が後任者になるかですが、今は分かりません。
任命は、政府が国会の同意を得て行うとなっていますが、一番大きな力を持っているのは首相です。
だが、当の岸田首相は、閣僚人事の不手際に追われ、物価対策に追われ、日銀人事や金利政策は念頭に無いようです。
しかし、閣僚人事はともかく、国家リーダーとしての首相に求められているのは小手先の物価対策ではありません。
むしろ、痛みを伴う物価上昇を受け入れ、それを企業収益につなげ、給料アップへの好循環を現実にし、国内消費を中心とした“健全な”景気向上の実現を果たすことができてこその首相です。
 
自由主義であれ共産主義であれ、経済発展で国民が豊かになると、当然、消費と個人貯蓄が増えます。
世界共通の現象ですが、増え方にはその国の国民性が顕著に出ます。
米国は「貯蓄<消費」となり、日本は「貯蓄>消費」となります。
この「貯蓄-消費」の余りが預貯金や債権・株を介して、投資へ注ぎ込まれます。
ゆえに、米国の投資が早くさかんになるのは当然ですし、日本の外貨準備高が増え続けるのも当然です。
 
経済発展が進むと、やがて「貯蓄-消費」の余りでは収まらない資金需要が起きます。
この不足する資金は「借入」や「債券」という形で調達されますが、目的があいまいな“金もうけ”だけの投資にも資金が注ぎ込まれます。
経済循環に貢献する目的を持って行う投資は経済発展に欠かせない道具ですが、金もうけだけを目的とする投資は「投機」です。
悪いとは言いませんが、この投機が経済をバブルに向かわせ、やがて弾けます。
その瞬間、投機資金は「不良資産」となり、経済の重荷となるのです。
 
「投機は行わない。額に汗した利益が貴い」
これは、故稲盛氏の有名な言葉です。
稲盛氏は、投資ルールを書き残しています。
その前掲書第3章「筋肉質の経営に徹する【筋肉質経営の原則】」の4番目の項目に、「投機は行わない。額に汗した利益が貴い」とあります。
そして、以下のようにも言っています。
「私にとって投資とは、自らの額に汗して働いて利益を得るために、必要な資金を投下することであって、苦労せずに利益を手に収めようとすることではない。私の会計学には投機的利益をねらうという発想は微塵もない。だから余剰資金の運用については、元本保証の運用が大原則であり、その中に投機的な資金運用のための『リスク管理』などはまったく含まれていない」
 
なるほどと思う反面、元本保証の安全運用に限ってしまうと、投資先は預貯金や国債の購入などに限られてしまいます。
海のものとも山のものとも分からないスタートアップ企業への投資など、「とんでもない」ということになります。
不動産投資なども「やってはいけない」投資の割合が大きくなるでしょう。
 
この問題、次回に続けます。