戦争抑止力としての軍事同盟(1)
2019.07.01
今回のトランプ大統領訪日の最大のイベントは、天皇との会見や大相撲観戦ではなく、安倍首相とともに護衛艦『かが』に乗艦したことです。
それは、このイベントが日米安保条約を日米軍事同盟へと進化させるショーという意味合いを持つからです。
こうした点をマスコミは見逃し、どうでもよい報道に終始しています。
今回から数回に分けて、最も大事なポイントを解説しましょう。
トランプ大統領が掲げる「アメリカン・ファースト」は身勝手な主張と受け取られていますが、本当にそうでしょうか。
トランプ大統領は、気の向くままにツイッター等で発言しているように見えますが、あれは一種の「陽動作戦」です。
マスコミはまんまとその罠にハマっていますが、それが一般人をミスリードする結果となっているのです。
前振りはこのくらいにして本筋に入るとします。
米国およびトランプ大統領は、その真意を隠しているわけではありません。
それは、2017 年 12 月にトランプ大統領が公表した「国家安全保障戦略」を読めば分かります。
この戦略の主旨は、非常に単純なものです。
「今の世界は競争的な状況にある。そうした認識のもとアメリカは自国第一主義を掲げる」
うがった見方をしなければ、当然といえば当然の主張です。
トランプ大統領の奔放な発言に惑わされて見過ごされ勝ちですが、米国がこうした新戦略を打ち出す背景を考察することが大事です。
それは、近年、中国とロシアが軍事力を前面に出し、米国が主導してきた戦後の国際秩序を根本から変えようとしていることです。
実際、軍事力にものを言わせて、ロシアはウクライナからクリミア半島を奪取し、中国は南シナ海を一方的に自分の海にするべく、強引に軍事基地化を進めています。
こうした現実を無視して「アメリカン・ファースト」は身勝手だと批判しているのがマスコミに誘導されている世論なのです。
中国は、世界第二位となった軍事力をむき出しにして、自国の覇権拡大に邁進しています。
ロシアのプーチン大統領は、こうした中国の覇権戦略に乗る形で米国への挑戦姿勢を鮮明にしています。
米国は、中国とロシアの、こうした軍事的挑戦を抑える軍事的優位を損なうわけにはいかず、「大規模戦争も厭わない」とのメッセージを世界に送ったのです。
これが「アメリカン・ファースト」の本質です。
ここにきて、中国とロシアの関係が軍事同盟化してきました。
この動きを、米国対中露という「1:2」の構図としないため、日本など米国の同盟諸国の動きが重要になってくるわけです。
つまり、自国の主権と独立を守るため、自国の軍事力強化と合わせて米国との同盟関係の強化が重要になってくるというわけです。
「独裁国家群vs民主主義国家群」という新たな冷戦の始まりです。