2024年への展望(1):日本経済が上りきれない理由
2024.03.04
賃金は少しずつ上がっていますが、物価上昇に追いつかず国民の不満が溜まっています。
岸田首相は「賃金上昇と物価上昇の好循環を」と連呼しますが、言葉が踊るだけの虚しさです。
労働組合の団体である連合は、ここぞとばかり「来年は最低賃金を1600円/時以上に、賃上げは6%以上を勝ち取る」と威勢はよいですが、その存在感は薄くなるばかりです。
日銀の慎重姿勢から分かるように、日本経済はデフレ状態から脱したとは言い難く、いつ揺り戻しが来てもおかしくない状態といえます。
こうした影に怯えている経営者は「賃上げはやむを得ない」と思いつつも、慎重にならざるを得ないのです。
欧米のように解雇や賃下げが自由に出来ない日本では、大胆な賃上げは、そもそも無理です。
労働法を変え、労使関係の硬直性を解き、社会主義的な国民意識を変えない限り、日本経済の将来は暗いのです。
日本は、「労働者は経営者に搾取されている」とする「女工哀史」的な労働観から抜け出せていないのです。
もちろん、そうした事例はゼロではないでしょう。
ですが、企業はすべて搾取企業だとしてきた現行法は、時代遅れです。
その意識から脱して、自由な働き方を推進する新たな法整備を進めるべきです。
そもそも、日本人は「見えるモノ」の価値は認めても「見えないモノ」の価値を認めない国民性を有しています。
ゆえに、「見えるモノを造る」製造業主体の経済から抜け出せないのです。
それに対し米国は、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるような、
ソフトウェアやネットサービスなどの「見えない価値」を商品にして大成功しています。
近年の大金持ちの代表のようなイーロン・マスク率いるテスラはEV(電気自動車)メーカーですが、その収益はハードである車本体ではなく、搭載する「見えない」ソフトウェアにあります。
つまり、目に見える「自動車」は見せ金に過ぎないのです。
生産台数でテスラの5倍以上のトヨタの時価総額を大きく上回っているのは、この「見えない価値」にあるのです。
しかし、「見える価値」に比べ「見えない価値」の持続は難しいです。
理由は、模倣が容易だからです。
それが分かっているからイーロン・マスクはEVに固執せず、「スペースX」を宇宙産業の雄に仕立て上げています。
人間的には呆れる面の多い人物ですが、無謀ともいえる「挑戦経営」には脱帽しかありません。
いずれ、彼が凋落する日が来るかもしれませんが、第2、第3のマスクが出現するのが米国です。
しかし、日本にそれを求めるのは無理です。
米国は、多民族国家であるから可能なのであり、単一民族に近い日本は別の道を歩むべきです。
その道とは、「見えるモノの価値を、見える以上に価値あるモノに見せる工夫」です。
その「工夫」とは・・、2024年のテーマとして次号以降で話しましょう。