戦争と平和(その4):国連の欠陥

2015.04.15

国際組織として戦前の国際連盟に代わって重要な役割を演じてきた国連も、やはり設立70年を迎える。
だが、その役割はすっかり変質してきた。
というより、「劣化してきた」と言ったほうが的確である。

かつて、「自衛隊を国連の管理下に置け」と言った政治家がいたが、いかに的はずれであったか。
その政治家の弁明を、いま聞きたいものである。

では、なぜ、ここまで国連が機能しなくなったのか。
そこには、国連の抱える重大な欠陥がある。

それは、米ソ英仏中の5カ国を常任理事国とし、拒否権という特権を与えたことである。
要するに、5カ国のうち1カ国でも反対したら、安保理のいかなる決議も出来ないという特権である。
たとえ、その1カ国以外の国連の全加盟国が賛成しても、である。

私が、この仕組みを「大欠陥」と断言するのは、5カ国が「神」でなければならないからである。
5カ国は、決して他国を侵略したり脅したりしない、正義の国でなければ成り立たないからである。

しかし、戦後70年の歴史を見れば分かるように、大半の戦争は、この5カ国が起こしたか、裏で糸を引いたものばかりである。
朝鮮戦争、ベトナム戦争、チベットやウィグルの侵攻、アフガン侵攻、キューバ危機、フォークランド紛争、・・
今も続く、南シナ海や東シナ海での中国の横暴、クリミヤを武力で併合したロシア、中東で起きた数々の戦争・・
そのほとんどが、この5カ国が起こした戦争や紛争である。

国連は、安保理決議によって「国連軍」を組織し、特定の国を武力制裁することができる。
これは、戦前の国際連盟にはなかった機能である。
国連とは、「戦争する機能を持った組織」なのである。

しかし、「国連軍」が編成されたのは、唯一、朝鮮戦争の時のみである。
(実態は「多国籍軍」だったのですが・・)
この時の「国連安全保障理事会」は、非常任理事国を含めた10カ国がメンバーであったが、北朝鮮を制裁するための決議は、賛成9:反対0:棄権1、つまり全会一致で採択された。

ここで、読者の方は、「えっ」と、思ったかもしれない。
ソ連と中国は「反対したのでは・・」と思うのが普通だからである。

まず、中国であるが、この当時、常任理事国であった「中国」は、共産中国ではなく、国民党の中華民国であった。
ゆえに、当然のことながら、「賛成」票を投じた。

次に、ソ連であるが、ソ連は「棄権」したのである。
上記の「棄権1」とは、ソ連のことであった。

ソ連は、欧米の関心が朝鮮に向いている間に、欧州に共産主義を浸透させようと目論んでいたようである。
それには朝鮮戦争が激化するほうが好都合と思い、「棄権」したのである。

それ以降、安保理決議はソ連、中国の拒否権に会い、国連軍は組織されていない。
国連安保理は、まともに機能していないのである。