日本流の中国との付き合い方を(その2)

2018.12.29

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(モウ・ワンジョウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)の逮捕には少々驚かされた。
それは逮捕に対する驚きではなく、これほど早く米国が動いたことに対してである。
 
華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の後に中国政府がいることは周知の事実である。
また、私の知る限り、米国等のハイテク技術を不当に入手していたことも事実である。
習近平国家主席は、その方法で技術を入手し続ければ米国に代わって世界の覇者になれると踏んで、「中国製造2025」をぶち上げた。
実は、この発表には中国政権内部でも反対の声が強かった。
現在の中国経済の発展は、トウ小平が40年前に打ち出した「改革・開放」路線を日米欧が積極的に支援した結果である。
決して、中国単独の努力の結果ではない。
ゆえに、ここで米国に牙を剥けば、日米欧を敵に回しかねないと危惧する声も大きかったのである。
 
だが懐刀の王滬寧(ワン・フーニン)にそそのかされた(?)習近主席は、自分の代で「偉大な中国の復活」は出来ると読み「中国製造2025」を大々的にぶち上げた。
トランプ大統領に引っかき回されている米国が弱体化した今が好機と踏んだのであろう。
 
中国の誤算は、トランプ大統領の資質に問題があろうと、覇権への挑戦に対しては米国が一枚岩となって動くことを軽視したことにある。
習主席が抱く野望は、戦前の日本が犯した過ちをなぞっているように見える。
 
日本はいち早く、ファーウェイとZTEの製品の排除に乗り出したが、日本政府としては驚くほどの速さである。
事前に米国から情報を得ての発動だったことは想像するまでもない。
中国政府は今回、極めて痛い部分を米国に突かれ、日本がいち早く動いたことで動揺している。
ただ、直接、米国や日本への報復処置はとらずに、孟晩舟(モウ・ワンジョウ)副会長を逮捕したカナダの元外交官と実業家を捕捉するという及び腰の報復処置を取った。
今回の事態にどう対処するか、政権内部で意見の統一が取れていないということである。
 
米中の戦いは、まだ始まったばかりである。
この問題の本質は、次世代通信規格「5G」の開発をめぐる覇権争いにある。
5Gは、今後の国家情報網や軍事力を大きく左右する根本の技術である。
米国議会は、トランプ政権が発足する前の2012年に、中国政府はファーウェイとZTEをスパイ行為の道具として使っているとして、2社の製品を国家安全保障の「脅威」に当たると認定している。
今回の逮捕にトランプ大統領はほとんど関与してはいない。
彼は、単にGOの指示を出しただけなのである。
ゆえに、今後、大統領が代わっても米国の態度は変わらないであろう。
さて、日本はどうすべきなのか。
安倍首相の判断やいかに。