企業の投資(1)
2025.07.16
バブル崩壊以降、企業の内部留保が膨れ上がり、様々に批判を受けています。
ですが、民間企業が利益をどう使うかはその企業の自由です。
使わずに貯め込んだことに、株主以外から「文句を言われる筋合いはない!」のです。
ゆえに企業は、こうした批判に耳を貸す義務は全くありません。
しかし、義務はありませんが、大企業など名の通っている企業であれば風評被害を気にするかもしれませんね。
実際、マスコミは度々、企業の内部留保を批判しますが、その論調は「消費者や下請けから搾取してため込んでいる」というステレオタイプの批判で、まるで違法や下請けいじめ、ごまかしでおカネをため込んでいるかのように批判します。
これが的外れな批判であることは、読者のみなさまはよくご存じだと思います。
また、これも読者の皆様には釈迦に説法ですが、「内部留保」という名前の財務科目はありません。
財務科目としては「利益剰余金」の形で表現されます。
この利益剰余金は企業が創業以来積み上げてきた利益の総量であり、これが赤字になっている企業が「債務超過」と言われるわけです。
それでも倒産しない会社は、「おカネがある」からです。
「カネさえあれば、会社は潰れない」が企業経営の大原則ですね。
利益剰余金の話に戻ります。
復習と思って、BS(貸借対照表)を見てください。
左側が会社の財産状況を表し、右側がその財産を作った手段であり、中身は負債と資本で構成されています。
さらに、資本の中身の大半は、資本金と「利益剰余金」です。
この資本の総額は「資産-負債」の残高と一致します。
BS(バランスシート)だから当然ですね。
そして、現預金は資産の一部であり、利益剰余金(内部留保)とは本来無関係なこともお分かりかと思います。
ですが、マスコミは内部留保が現預金であるかのような印象操作をして国民に誤った概念を植え付けています。
企業経営とは、この資産を増やしていくゲームに他なりません。
そして、「投資」とは、この資産を大きくしていくための手段の一つです。
ゆえに、投資ができない企業は成長できず、やがて“じり貧”になっていきます。
それは、ゼロサムゲームの中で搾取される側に回ってしまうからです。
ゼロサムゲームは利益を奪い合うゲームであり、ゲーム参加者の利益の総量はまったく増えていかないゲームです(デフレ時代の日本がそうでした)。
麻雀ゲームを考えてください。
ゲームの中で、麻雀の点棒の本数は“ただの一本”とて減りも増えもしません。
「でも、おカネを賭けて、儲けも損も出るよ」と言われそうですね。
たしかに、ゲームでおカネを賭けることは一種の投資と言えますね。
(しかし、違法ですので、この点に関してはメルマガの著者としては奨励しませんが・・)
ですが、他のプレーヤーの投資金を奪い合うだけで、おカネの総額はまったく増えません。
(麻雀屋の場所代や、注文したラーメン代の分だけ減りますが・・)
ですから、こうしたゲームのような投資ビジネスの社会的貢献度はゼロだといえます。
では、大金を投じてビルを建てる場合はどうでしょうか。
自社の資金あるいは借入金で資金を賄えれば、その「現預金」などの資産が、所有ビルという不動産資産に変化します。
この新しいビルで企業収益が伸びればさらに資産が増えるので「成功した投資」となります。
逆に収益が伸びないと、ビルの不動産資産は経年劣化で減少し、資産減少となります。
つまり「失敗した投資」となりますが、建築費用以上に高く売却できれば、それでも「成功した投資」となります。
投資の話、次号以降も続けていきます。