これからの中小企業の経営(3)

2024.03.18


私は大企業に在籍した後、独立して、中小企業の経営を33年間行ってきました。
その間、幾つかの企業の経営も兼務し、また経営コンサル(この言葉好きではないのですが・・)として、多くの会社の経営を見てきました。
 
そこで一番強く感じたことは、経営者と従業員との意識のズレ(あるいは隙間)です。
これは、必然的に生ずる現象であり、経営の宿命ともいえるジレンマです。
また、企業が小さいうちは小さかった隙間が、成長すると大きく広がっていくことは、まさに自社の経営で痛いほど経験しました。
なんとか、その隙間を埋めようと必死に努力しましたが、その大半は虚しい徒労に終わりました。
そうした虚しい努力の代償は、恐ろしいものでした。
そうです。本当に倒産の縁に立たされたのです。
 
昨年の秋、現在の趣味の登山で50年ぶりに槍ヶ岳の山頂に立ちました。
山頂は、少し細長い6畳間ぐらいの広さで、実感では4畳半ぐらいにしか感じません。
そして、東西南北の四方は、すべて90度に思える断崖絶壁です。
おまけに足元は、大きめの石がごろごろで、歩くと“ずっこけて崖から落ちる~”で、四つん這いの移動がやっとです。
(若者は、スタスタ歩いていましたが・・)
その山頂で、倒産必至だった昔を思い出したのです。
 
登山される方はご存知ですが、よく「そんな山頂にどうやって登り、どうやって降りるんだ」と聞かれます。
答えは簡単。一本の長いハシゴが南面の崖に掛かっているのです。
「なんだ」と思われるでしょうが、しかし、初心者には恐怖のハシゴで、そこで断念される方もいます。
経験者である私でも、「一瞬たりとも気を抜けない」の思いで登ります。
 
話が少々脱線しましたが、つまり、絶体絶命の倒産の縁で必要なのは、このハシゴなのです。
間違っても、破れかぶれに、こうした断崖絶壁に素手で挑むべきではないのです。
 
何度か、倒産必至の会社のコンサルを依頼されたことがあります。
結果は、2勝8敗といったところです。
勝率2割ですから、野球だったら最下位ですね。
ゆえに、「もうやりたくない」が本音です。
 
ですが、8敗のうち、半分は救える可能性がありました。
しかし、その可能性を経営者自らが壊してしまいました。
理由はいろいろですが、従業員や取引先より自分自身が大事、というより、自身のプライドを優先してしまうのです。
 
本メルマガで何度も言及していますが、私は故武岡先生の下で、長年、孫子の兵法を始め、様々な戦略論を学んできました。
先生は、先の大戦においては最前線の将校(小隊長、中隊長)として戦い、戦後は陸上自衛隊の陸将補(旧陸軍では少将に当たるといいます)として、幹部候補生の教官を務めていました。
私は、現役の自衛官を含めた先生の研究会で戦略や戦術論を学びました。
先生からはマンツーマンでの教えも受けましたが、その中で絶体絶命状態に置かれた戦場での実際の話も聞きました。
数人の小部隊で300名程度の敵とぶつかった時、「ここで死ぬのか」と思い、どうせ死ぬなら破れかぶれの突撃をと考えたそうです。
だが、思い直し、最年長の上等兵の部下に「どうする?」と聞いたそうです。
なにやら、竹野内豊くんが演じるタクシー会社のCMのような話ですね。
あのCMを見るたび、先生の話を思い出します。
 
この話、長くなるので、次回に続けます。
お楽しみに・・