小さな会社の大きな手(10):戦略投資の失敗(その1)
2016.02.15
今まで、「戦略投資の勧め」のような論調で本項を書いてきましたが、決して、「イケイケどんどん」の経営を勧めているわけではありません。
戦略投資には、常に危険が伴います。
その最大の危険は、投資につぎ込んだお金が回収不能になることです。
それと、失敗のトラウマが社内に残ることです。
従って、経営陣は、この危険要素を最小限に抑える戦術と、失敗した場合の傷を最小限に抑える戦術の、2つの戦術を立案しておく必要があります。
この2つの戦術を立案しておかない投資実行を「イケイケ・・」の経営と言うのです。
戦略投資には、常に危険が伴います。
その最大の危険は、投資につぎ込んだお金が回収不能になることです。
それと、失敗のトラウマが社内に残ることです。
従って、経営陣は、この危険要素を最小限に抑える戦術と、失敗した場合の傷を最小限に抑える戦術の、2つの戦術を立案しておく必要があります。
この2つの戦術を立案しておかない投資実行を「イケイケ・・」の経営と言うのです。
弊社は、過去に、このことを軽視した戦略投資を行ってしまい、結果として大きな痛手を負いました。
それも一度ではありません。
懲りずに、何度も行い、何度も失敗してしまいました。
TVの番組で「しくじり先生」という番組があります。
過去に大きな失敗をした芸能人などが、自分の失敗を赤裸々に語る番組です。
学校で、先生が生徒に講義する形式を模して、失敗芸能人が先生として、生徒役の芸能人たちに話すのですが、これが“面白おかしい”のです。
まさに、「他人の不幸は蜜の味」というヤツです。
私も、そこで話をしたいくらい、失敗を重ねてきました。
でも、挑戦したあげくの失敗で、今では経営の糧になっていますから、これはこれで財産だと開き直っています。
「しくじり先生」の芸能人たちも同じでしょう。
他人に話せるようになったのであれば、トラウマから脱したといえるのです。
最初の失敗は、創業した年に行った“商品”としてのCADソフトの開発です。
ある程度、手持ちの資金があったので、自信があった建築設計用のCADソフトを開発したのです。
1年も経たずに、「なかなかよい出来」と自負したソフトが出来上がりました。
当時の主たる事業であった建築設計業務では大いに力を発揮したので、客観的にも「良いソフト」だったのだと思います。
実際、販売するために、いろいろな建設会社や設計事務所で「デモ」を行いましたが、概ね好評でした。
しかし、“売れない”のです。
購入をしてくれた会社はありましたが、それらは、例外なしに「CADソフト」を導入していない会社でした。
すでに「CADソフト」を導入していた会社でも、「良いCADだ」と評価はしていただけるですが、購入はしていただけないのです。
「どうして?」と悩んだのですが、あるお客様が、売れないわけを教えてくれました。
その時のお客様の声を再現します。
「このソフト、すごくいいよ。すぐにでも導入したいくらいだ。
でも、ウチには、今使っているソフトがあって、まだ2年ぐらいしか経っていないんだよ。
これで、オタクのソフトを買うというと、上から『なんで、2年ぐらいしか使えないソフトを導入したんだ』と、過去の導入経緯を責められるんだよ。
それでもOKが出るには、『圧倒的に優れたソフト』でないとダメなんだよ」
この言葉には打ちのめされました。
商品としての製品を世に出すのは、圧倒的に優れた『何か』が無ければダメなのです。
性能か、価格か、速さか・・の『何か』が必要なのです。
こうして、最初の商品開発は大失敗に終わりました。
数千万円のおカネが露と消えましたが、それ以上の開発費をつぎ込めないことで、損害はそこで食い止められました。
創業間もない会社だったので、銀行がお金を貸してくれなかったのです。
逆に、だから良かったといえます。
借り入れが出来たら、傷が深くなり、そこで倒産していたかもしれないのですから。
さて、続きは次号で。