これまでの経済、これからの経済(4)

2019.12.17

金貸しが多額なカネを持っているとは限りません。
多くは、金持ちからおカネを借りて又貸しをしているわけです。
銀行だって同じですね。
預金者から集めたおカネを企業や個人に又貸ししているわけです。
 
かつて隆盛を極めたサラ金も全く同じ構図です。
ただ、銀行に比べて信用度がまるで低いので、低利でおカネを調達することができません。
どうしても、高い金利をエサに、おカネを集めるしかありません。
最初は個人の金持ちに10~20%もの利息を提示して集めていたとのことです。
 
今は破綻したサラ金大手に勤めていた知人から話を聞きました。
彼は、サラ金だけではなく、街金(まちきん)や闇金(やみきん)の事情にも詳しく「なるほど」という話を豊富に教えてくれました。
 
彼の勤めていた会社は、ある程度節度を設けていたようですが、貸し出しが拡大するにつれて、焦げ付きが増えていったようです。
そうして穴が開いた資金手当てに高利息のカネを調達するようになっていき、急速に利益が落ちていったということです。
それでも、大手都銀からの融資が得られて一息つきました。
でも、金利は8~13%だったといいますから、大手もえげつないものです。
 
ところが、大手からの融資で一息ついたのも束の間、予想外のことが起きました。
政府による徳政令です。
読者のみなさまも記憶にあると思いますが、金利のグレーゾーンの撤廃です。
利息制限法によると、元本に応じて、利息の上限は年15~20%以下と決められています。
企業融資の場合は、大半が100万円以上となるでしょうから、15%が上限です。
これに対し、出資法で違反とされる金利は年29.2%でした。
この二法の金利の隙間が「グレーゾーン」と呼ばれ、サラ金は、この領域で商売をしていました。
つまり、お客の信用度に応じて、15~29.2%の金利でおカネを貸していたわけです。
この29.2%を超える利息を取ると、「闇金」と呼ばれる違法会社になるわけです。
ちなみに、「街金」はサラ金と同じグレーゾーンで商売していた合法会社です。
 
以前から、利息制限法(15~20%)以上の貸付は違法でしたが、顧客が任意に払った場合は返還要求が出来ないとされていました。
ところが、2006年にこの条項が撤廃されました。
そこに目を付けた弁護士や司法書士が「過払金請求ビジネス」を大々的に展開したことは、読者のみなさま御存知の通りです。
さらに、2010年6月に、二法の間のグレーゾーンが撤廃されたことで、サラ金、街金は、完全に息の根が止まってしまいました。
 
サラ金にいた知人によれば、こうした金貸し業のリスクは江戸時代から変わっていなくて、金利25%が下限だということです。
つまり、借り手の4人に一人が返済できなくなると、儲けはゼロになり商売が破綻してしまうということであり、そのリスクに近い焦げ付きがあったとのことでした。
 
結果として、彼のいたサラ金を含めて、全ての大手サラ金は大手銀行の傘下に吸収されました。
大手都銀は、サラ金の顧客リストと返済履歴を手に入れ、優良顧客は自行のカードローン会社の顧客にして、不良顧客は切り捨てました。
切り捨てられた顧客は、ハイエナのような闇金の餌食になっていったのです。
これが、平成の徳政令の結末です。
 
次回は、闇金の世界を少々説明します。