企業の投資(6):投資は怖い!
2025.12.02
前回、企業が内部留保を膨らませている現状の背景の話をしました。
新たに政権を担うことになった高市首相は、企業の内部留保の増大を批判するのではなく、この内部留保を投資に使うことを要請しました。
企業の批判ではなく投資を促す姿勢は良いと思いますが、「いまいち、インパクトがないな」とも思いました。
それは、企業に対し「これからは、カネを貯めるより使うほうが得だ」と思わせる政府の姿勢転換があまり見えないからです。
その最大の障害は、財務省が執拗に誘導し、これまでの岸田・石破政権が引きずられてきた「プライマリーバランス」です。
これは「税収と歳出はバランスさせるべき」という考えで、「そりゃそうだ」と思いがちになります。
ですが、それは国家の財政を「家計の財布」と同じだとする考え方で、正しいとは言えません。
良く知られた話ですが、一般家庭と違い、政府には通貨発行権(つまり、お札を刷れる権限)があり、不足分をいくらでも穴埋めすることが可能です。
勿論、政府がお札を刷るのではなく、政府は国債発行という形で市場から資金を調達します。
しかし、近年の日本は全額を市場から調達することが難しく、半分くらい日銀が引き受けることを続けてきました。
日銀は政府の子会社のような存在ですから、実質、政府が国債を買い戻しているようにも見えます。
ゆえに、1000兆円と言われる国債発行残高は、実質500兆円だろうという見方もできるわけです。
もちろん現在の状況を続ければ、いずれはハイパーインフレとなり経済破綻する危険があります。
しかし、その限界がいくらなのかという試算は「将来の経済発展をどのくらいに見積もるか」が下敷きになるので難しい問題です。
その問題の難しさから、財務省は「税収の範囲内の支出を」という「プライマリーバランス」に固執するわけです。
稼ぎの悪い亭主をどなって小遣いを減らす主婦のようなものです。
ですが、こうした主婦が悪いわけではなく、稼げない亭主が悪いのは当然です。
つまり、悪いのは財務省ではなく、稼ぎを増やせない政府(岸田政権、石破政権)だったわけです。
この亭主が高市政権に代わったわけです(女性首相なので、「亭主」ではなく「女将」かな?)。
高市首相は、財政を絞るのではなく、経済のもう一方の主役である企業に対し、積極的な投資(つまり、おカネを使え)を奨励したわけです。
だが、ここで従来型の補助金をばらまくことは間違っています。
(まだ、こうした政策は続いていますが・・)
先導役としての政府が、国債発行による公共事業投資を増やし、その効果がまんべんなく企業に行きわたるような政策で、二次、三次的な経済発展効果を促すことが肝心です。
企業は、効果が未知である投資は「怖い」のです。
ゆえに、投資を促すにはインフレ経済になることが必須です。
ところが、30年もデフレ経済が続いたことで企業の投資は委縮し、多くの企業経営者は投資効果が上げられずに退くはめになりました。
その様子を見ていた後継者も、どうしても投資に腰が引け、ずるずると半デフレのような経済が続いたのです。
こうした経営者の恐怖心を、逆に「この流れに乗り遅れることが怖い」と、インフレ経済に変えることが新政権に求められているのです。
大半の企業は、高市首相の中国の脅しに屈することのない姿勢を支持しています。
同様に、財政緊縮派による攻撃に屈することなく、大胆な経済政策を行うことを期待しています。
そうした新政権の姿勢が明確になることで、企業の投資意欲は上がります。
もちろん、企業側は、こうした効果が出ることをただ待つのではなく、積極的な投資に打って出るべきであり、金融機関は、その後押しをするべきです。
2~3年間、政府がこの姿勢を変えなければ、日本経済は再び上昇に転じることを信じます。

