中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その5)

2023.01.10

ゼロコロナ政策で狭い地域に押し込められ、時には家から出ることも禁止されるという状況に、さすがの中国国民にも怒りが生じ、その怒りをデモという形で地方政府にぶつけ出しています。
中国でのデモ行為は身の危険を伴いますが、そうした怒りが沸点に近づいているのでしょうか。
 
前回、不動産市場の様子を解説しましたが、「値下げ制限」と「在庫を減らせ」という矛盾した二つの政策を同時に達成せよという中央政府の無理難題に、地方政府はどんどん疲弊しています。
しかも、先の共産党大会で経済通と言われる李克強たちを党中央から追い出したことで、地方政府は絶望し、お先真っ暗状態になっています。
 
その結果、苦肉の策として、先進国では考えられない奇妙な政策が打ち出されています。
例えば、河南省済源市では「不動産を初めて購入する住民は、頭金を20%以下とする」という通達を出しました。
一見、何の問題もないように思えますが、附則が付いています。
「不動産販売企業は、その頭金を一年以内を限度に分割で受け取ること」
さらに「在庫事情によっては、最長一年、分割支払い期間を延ばしても良い」とあります。
そもそも「頭金って一括で払うもの」と思うので「頭金の分割払い?」に頭が混乱します。
さすがに、この通達は、すぐに削除されたということです。
 
ついには「お金がないなら、スイカや小麦、ニンニクで支払っても良い」という物々交換方式まで登場しました。
勿論、不動産企業が、こんなことを歓迎しているわけではありませんが、「値下げはまかりならんが、早く売れ」という中央からの指示に追い詰められた地方政府が苦肉の策として出しているのです。
 
さすがに、こんなことでは売れないと分かっている地方都市は「住宅チケット」なるものを発行し出しました。
これは、再開発で強制退去させられる住人に対し、立ち退き料や保障金を支払うかわりに、住宅購入に使える住宅チケットを発行する、というものです。
地方政府は、財政逼迫の中で、不動産の在庫を解消せよとの中央命令に従わなくてはなりません。
そこで、立ち退き料や保障金のかわりに不動産購入のみに使える「住宅チケット」を発行すれば、一石二鳥と考えたのでしょう。
しかし、強制的に立ち退きさせられる住民にしてみれば、引っ越し費用や当面住むための住居の賃貸費用など、とにかく現金が必要です。
新たな家を買うどころではないのです。
しかし「これは良いアイディア」とばかり、全国の多くの都市が模倣し出しているとのことです。
 
さらには、地方政府が勝手に住民の預金状況を調べ、住宅購入の圧力をかけるということまで行われています。
地域の協同組合である「合作社」ごとに「新築住宅を少なくとも2つ以上ネットで予約せよ」といったノルマを課している行政区もあります。
また、預金があるのに不動産を購入しない者を「悪意ある非不動産購入者」として抽出し、購入を促すよう、出先機関にハッパをかける通達まで出す行政区も現れています。
中国が自慢するITの普及率の高さは、こうして国家に利用されるわけです。