2024年への展望(4):日本経済が上りきれない理由
2024.04.02
日銀のマイナス金利解除に対し、経済評論家の森永康平氏は、「銀行が日銀の当座預金への積み増しを行い、企業への貸出しを渋るようになる」として、否定的な意見を述べています。
さらに法人税を上げるべきとの意見に賛同していました。
賛同の理由はこうです。
「企業は税金として取られるのなら、人件費に使うほうがいいというインセンティブが働き、賃金アップが見込める」
ただ、「経団連の偉い人からすれば、なんでうちの金を取るんだ、と考え、政治家に“(選挙で)落とすぞ”ということになってしまう」ので無理だろうとも言っていました。
森永氏らしい意見に「なるほど」と思う反面、そんな単純思考の経営者ばかりではないだろうと言いたくなりました。
人件費は大事な経営要素であり、税金支払いも企業の義務として避けるわけにはいきません。
しかし、どちらも資金繰り上はマイナス要素です。
ゆえに、人件費も税金も、経営者の本音は「少なければ少ないほど良い」であることは当然です。
一方で、社員にできるだけ多くの給料を払いたい、また税金もきちんと払いたいとする気持ちを持つ経営者が多いことも事実です。
このように、まるで正反対のアンバランスな気持ちを抱えているのが経営者です。
こうした経営者心理に対する考察もせずに「経営者は悪」として一方的な報道を繰り返すのがマスコミです。
マスコミも商売なので、視聴者や読者の気持ちを喚起する目的で煽り記事を書くことは当然かもしれません。
ならば、そうした公平性を政治に期待したいところですが、現実は「でも~」な低レベル状態です。
日銀のマイナス金利解除に対する政府の姿勢も明確さを欠き、不安しかありません。
財務省は、相変わらず財政法を盾に「プライマリーバランスの堅持」しか言いませんし、鈴木財務相は官僚が作成したペーパーを読むだけ。
要するに、「歳出は歳入で賄う」という一般家庭の家計を預かる主婦目線の物言いしかしません。
では、岸田首相はというと、「貯蓄より投資を」を唱え、学校で投資を教えるというように国民を投資に向かわせることに前のめりです。
しかし、はたして学校の先生方は「ギャンブルと投資」の違いを正しく教えられるのでしょうか。
渦中の「水原一平氏」のような人間を作り出す危惧しか感じません。
敗戦後の惨めな経済から日本が脱出できたのは、思惑付きとはいえ米国からの大きな経済援助があったからであり、
また、当時の日本人が懸命に働いたからです。
私の幼かった頃の思い出の大半は、必死に働いていた父や母の姿で占められています。
我が家は生活費がやっとの零細商売でしたが、元旦の一日だけ休んで、後の364日はまったく休み無く働いていました。
我が家が例外ではなく、大半の商売屋は似たような状態でした。
ただ、その昔に戻れというつもりは毛頭なく、経済発展に投資は大事な要素であることは百も承知です。
しかし、肝心の日本国政府の投資戦略がさっぱり分かりません。
「プライマリーバランスが・・」なんて言っている財務省に投資戦略など無いのは当たり前です。
政府内で投資の先頭に立つのは国土交通省ですが、そのトップが公明党に独占されている事態は異常というしかありません。
また、かつて政権を担った当時の民主党も、「コンクリートから人へ」を掲げ、必要な投資まで削りました。
その名残を引きずる立憲民主党にも全く期待できません。
八方塞がりの今、現在の与野党体制に代わる政治の枠組みの大胆な変更しか道はないのだと思います。
次の総選挙における国民の意志を期待します。