短期的変動に備える経営へ(5)
2017.06.19
これからの商売(1):ライザップ商法
今号からしばらく、「これからの商売」を論じていこうと思います。
もちろん、私も経営者ですから切実な問題です。
できるだけ具体例を“さかな”に、少しくだけた論評を心がけていきます。
第1回の“さかな”は「ライザップ商法」です。
「結果にコミットする」
こう聞けば、誰でも例のCM映像を思い浮かべるでしょう。
それだけ、あの赤井英和氏の膨らんだお腹と、事後の腹筋が浮き出た腹との対比は強烈でした。
赤井氏が元人気ボクサーだった経歴をうまく使ったCMには感心させられました。
(決して「高感度の高いCM」というわけではなかったことに、”特に注目“してください)
ダイエット商売は、古くからある商売で、雨後の筍のごとく登場しては消えていく商売です。
女性誌の広告では、化粧品と並ぶ2大広告といってもよいでしょう。
つまり、市場ニーズの非常に高い商売だということが第一のポイントです。
しかし、消費者の側から言うと、達成の難しさが「半端ない」という高いハードルの分野なのです。
そこで、近年は、耳に優しいキャッチのダイエット商法が主流になっていました。
いわく、「楽に痩せられる」「一日たった5分で」「普段の食生活のままで」・・
果ては「寝ている間に痩せられる」なんていう広告まであります。
「んなわけ、ね~だろう!」とツッコミたくなるような広告ばかりです。
そんな中に登場したライザップの広告、インパクトは特大でした。
しかも秀逸だったのは、「結果にコミットする」というキャッチコピーです。
10kg前後のダイエットが楽なわけはありません。
きつい運動と徹底した食事管理が欠かせません。
それが出来ないから人は太るのですから、当然のことです。
そんなこと、消費者はとっくに知っています。
知っていて挑戦しては、あえなく挫折を繰り返しているのです。
それを「結果を保証する」と言ってくれたのです。
入会金を含めて2か月で34万8000円(税別)という高額にもかかわらず、予約は数ヶ月待ちという状況らしいです。
当然、この会社は大儲けをしています。
成功したポイントは、それまでのトレーニングジム会社と正反対の商法であったことです。
従来のトレーニングジムは、会員を募り、機械やプールを自由に使わせるという方式で、指導員はいても、大勢を相手に初期の指導や機械の使い方を教える程度のサービスでした。
そのかわり、月1万円前後という低価格のビジネスモデルでした。
それをライザップは、「あなたのためだけの“オーダーメイド”」という完全なマンツーマンの個別指導で、食事内容の報告までさせて、違反には厳しい叱責までするという徹底ぶり。
かなりの高額だけど、目標が達成できなかったら返金するという甘い言葉も用意。
実際はほとんど返金なんか無いはずです。
日本人は「恥の文化」の中で生きています。
達成できなかったのは「自分の責任」で人のせいにするのは「恥」という思いがあります。
その心理を“いやらしい”ほどに掴んだ商法です。
私的な心理から言えば「嫌な商法」と拒絶反応が出ますが、論理思考からいえば、至極納得できる商法です。
「勝てば官軍」
これが商売の基本だと言えますから、違法でない限り賞賛すべきと思います。
ところで、「次はどうするのかな」と思っていたら、海外展開とゴルフや英会話という異分野への殴り込み。
「なんだ、ユニクロとおんなじか・・」と感じて、少し興ざめしています。