今後の建設需要(3):地方行政の弱さ

2019.11.18

鹿児島建設新聞の10月11日号の一面に興味深い記事が載りました。
建設施工の平準化を実現するには翌年度への繰越を3割にする必要があるという主張です。
鹿児島県の場合の実態数字を、繰越率と繁閑比(記事では、繁忙期(12月)と閑散期(5月)の工事量の比で表していました)で対比していました。
「年度末の繰越率が上がれば翌年度の繁閑比が下がり、工事量が平準化される」という結論は当たり前の理屈ですが、具体的な数字で表しているので、説得力のある記事になっていました。
 
この記事では、前年度からの繰越:当年度内:翌年度への繰越の比率を「3:4:3」とすることを理想比率として、「黄金比」と呼んでいました。
公共工事を主体とする地方建設会社にとっては納得の比率といえますが、実現への道は簡単ではないでしょう。
今回のサブテーマにあげた「地方行政の弱さ」がネックになっているからです。
 
日本の地方行政は、47都道府県に分かれ、さらに1700余りの市町村に分かれています。
平成の大合併の前は3000ぐらいありましたから、だいぶ減りました。
しかし、それでも多いし、形は減ったけど、実態は前のままというところもあります。
私の故郷もそうです。
故郷の町を含め幾つもの町村が一つの市に合併されましたが、実態は何も変わりません。
親戚との会話の中でも、旧町村名しか聞こえてきません。
 
この平成の合併策は何を目指したのでしょうか。
地方行政の強化であったとしたら、全くの失敗策です。
企業合併もそうですが、「とにかく合併して大きくなれば強くなる」という考えは間違いです。
弱者同士が合併すれば、もっと弱くなるだけです。
具体的でリアルな「財政基盤の強化」策や「発展的投資計画」策があってこその合併でなければならないのです。
 
もっと根本的なことがあります。
47都道府県をそのままにして、地方行政の二重化というムダと非効率さにメスを入れなかったことです。
交通手段も通信手段も無いに等しい明治維新時代に作られた47の行政区を、交通も通信も劇的な変貌を遂げた現代に、そのまま維持している理由が理解できません。
都道府県を廃止し、10程度の行政区に編成し直す必要があったのです。
それにより、当然、地方を統括する国の組織を絞り込み、新たな地方行政区に徴税権を含む広範な権限を移譲することをすべきなのです。
もちろん、これだけの改革を断行すれば、マイナスの側面も一気に吹き出し、相当の混乱と不満の渦になるでしょう。
断行する内閣も倒れるでしょう。
でも、考えてみてください。
消費税導入に至る過程で内閣が3つ倒れたのです。
その痛みなくして、行政の大改革など出来るはずもないのです。
 
冒頭で紹介した鹿児島建設新聞が提唱する黄金比の実現は、こうした改革の中でしか実現出来ないと思う次第です。