価格競争に勝てる『建設生産システム』(6)顧客の願望を理解する
2013.06.30
建設会社は、社会や顧客の日常を支える基盤を造り、整備することが仕事です。
そして、公共発注者であれ、民間会社であれ、個人であれ、顧客が工事を依頼する理由は同じです。
自らの事業や生活において、「劇的な技術革新」を実現したいからです。
そして、その依頼を促す最大の要因が「社会情勢の変化」なのです。
勿論、顧客の口からは、そんな言葉は出ないでしょう。
でも、この2本の要素が交錯するところに顧客のニーズが生じるのです。
そして、公共発注者であれ、民間会社であれ、個人であれ、顧客が工事を依頼する理由は同じです。
自らの事業や生活において、「劇的な技術革新」を実現したいからです。
そして、その依頼を促す最大の要因が「社会情勢の変化」なのです。
勿論、顧客の口からは、そんな言葉は出ないでしょう。
でも、この2本の要素が交錯するところに顧客のニーズが生じるのです。
分かりやすい例を考えてみてください。
顧客が、「遊んでいる土地があるし、世の中は高齢化の波が押し寄せている。国の補助金も付くようだし、市でも固定資産税の減免などを打ち出すようだ、よ~し、いっちょやるか」と考えたとします。
高齢化、国の補助金、市の減税、これらは全て「社会情勢の変化」です。
しかし、この変化を捉えた顧客に建設意欲が芽生えても、一般の顧客は、老健施設の運営に対しては素人だし、施設の建設についても素人です。
つまり、顧客自身には「劇的な技術革新」が出来ないのです。
だから、その能力があると見込んだ設計会社や建設会社、施設の運営会社などに声をかけるのです。
だとしたら、入札参加も見積りも、まず、この2つの要素を解析し、その交差点に込められた顧客の願望を理解しなくてはならないはずです。
どうでしょうか。あなたの会社は、そのことを考え、徹底的にこの2つの要素の交差点を解析してから見積りを作成しているでしょうか。
そのことをきちんと捉えている会社がライバルだった場合は、価格競争に入る手前の勝負で既に負けているのです。
あなたの会社は、その不利を覆(くつがえ)そうと無理な価格で勝負を掛けていませんか。
また、PM(プロジェクト・マネジメント)理論に基づくマネジメント手法(ゴールドラットの提唱によるTOCなど)に取り組んでいる会社は、プロジェクト・チャータ(工事の背景や目的などを記述したの)に類することの文書化を義務付けていると思います。
しかし、このような取り組みを行っている会社でも、私がしつこく述べてきた「2つの要素の交差点」の解析までには至っていません。
だから、プロジェクト・チャータ(TOCでは別の名前になっている)の作成が形式的になってしまうのです。
アマゾンの創始者、ジェフ・ベゾスCEOは、アマゾンが応えるべき顧客ニーズを明確に言い切っています。次の3つです。
(1)「豊富な品揃え」
(2)「エブリデー・ロープライス(いつも低価格)」
(3)「コンビニエンス(利便性)」
この3つのポイントでライバルを引き離すために、アマゾンは「短期的には損をする可能性がある」様々な戦略を実行してきたのです。
彼らの勝利は、この結果です。
それと、顧客が望む「劇的な技術革新」力を持っていない会社は、そもそもこの交差点が作れないことに気付くべきです。
結局、ダンピングか裏の手を使う以外に勝機は見出せないでしょう。
そんな会社が、PMやTOCに取り組んだところで、精神論以外の効果は見出せないのです。
市場のニーズを理解せず、技術力を上げる努力もせずに、マネジメント手法に走るのは愚行と言ってもよいでしょう。
建設業界内で乱発される「適正価格」、「適正受注」なる言葉の無意味さも、それと同義です。
「適正」なる言葉は、単なる精神論に過ぎません。
トップがそんな言葉にすがる会社は淘汰されます。
真の『建設生産システム』を作りたければ、「適正」のような意味のない言葉を社内から駆逐することから初めてはいかがですか。