今後の建設需要(7)

2020.07.16


少し休止していた本シリーズですが、経済環境の激変がもたらす建設市場への影響を考え、再開することにしました。
 
新型コロナウィルス禍による建設プロジェクトの停止は予想されたほどではありませんでしたが、長期契約を結ぶ建設工事の特質からは当然のことといえます。
問題は今後の需要ですが、地方から暗雲が立ち上り始める可能性は高いです。
東京都のように財政に比較的余裕のある自治体は、国の施策とは別に、独自のコロナウィルス対策で急場をしのぎましたが、公共事業の執行を一時停止した自治体も出てきています。
今後、第2次、第3次の感染拡大が来ると予想される中で、コロナ対策を優先する予算配分のあおりを公共事業が被ることが考えられます。
 
しかし、その一方で、自然災害の深刻化も懸念され、各自治体は予算組みに苦悩しています。
国も天文学的な金額に膨らんだコロナ補助金の回収に増税を検討せざるを得ず、地方交付金を増額する余裕はないと思われます。
今年度の公共事業は、補正予算と合わせ総額で10兆円を確保しましたが、地方の中小建設会社にとり国の直轄工事は、JV以外での参画が難しい案件です。
中小会社が主戦場とする地方自治体発注工事の予算配分がどうなるかは、不透明な状態です。
 
民間工事に目を向けると、新型コロナウィルスの影響はまだ少ないようですが、建設市場の遅延性によるもので、今後も大丈夫といえる状況ではありません。
経済の回復が速やかに進めば民間発注者の意欲が落ちることはないと思われますが、長引くようであれば、投資マインドの抑制が出てくるでしょう。
怖いのは、そうしたマインドが連鎖反応を呼び不況が深刻化することです。
不況は心理的な面から拡大することは、過去の事例から嫌というほど学んでいます。
さすがに政府も学んでいて、日銀による大量の資金供給や企業に対する補助金等の政策も充実してきています。
批判はあれど、これらの政策の効果は確実にあり、広く国民は恩恵を受けています。
 
しかし、建設業界は、こうした政策に乗るだけで、社会インフラ整備という産業が負っている使命感という面では考えが浅かったといえます。
「そんなことはない」と反論される向きもあるかと思いますが、自分たちの感じ方が重要なのではなく、国民・市民の感じ方のほうが重要なのです。
建設会社に勤務していた時代を思い返してみると、社会的意義に対する思いが強かったとは言い切れない自分がいます。
次号から、そうした社会や個人、および発注企業側の観点に立った建設市場の近未来を解説していきたいと思っています。