これからの中小企業の経営(9)

2024.09.04


統計データによると、借入金の返済猶予(いわゆるリスケ)を実施した中小企業の数は、235万社に上ります。
350万社と言われる中小企業全体の67%がリスケを実行したことになります。
ということは、リスケをしなかった企業は33%しかなかったということです。
 
実は、この%数字は、これからの中小企業の経営にとって大きな意味があるのです。
公表されていませんが、今後、政府はリスケ企業ではなく、リスケをしなかった33%の企業を支援する方向に政策をチェンジするとのことです。
つまり「経営が苦しい企業を支援する」という、これまでの政府方針から「これから生きる可能性の高い企業を支援する」という180度の政策転換を意味しています。
少しだけ残している”これまで”の中小企業支援策は、単なる“目くらまし”なので、あてにするのは危険です。
 
日本が企業淘汰の時代に入ったことを自覚されている経営者の方は多いでしょうが、上記の政府方針の転換まで読み切れている方は少ないのかなと思います。
しかし、この方針転換は前月号で述べた「中小企業の淘汰を促進する」という方針と整合する政策といえるので、これからは、政府が打ち出す政策の裏を読み取っていかないと危険です。
つまり、政府の政策を利用することは良いですが、政府を信用し切ってはいけません。
歴史を学べば“手のひら返し”は、昔から「時の政権」の得意技であることは分かるはずです。
中小企業としては、もう安易なリスケは認めてもらえなくなることを資金計画の中心に据える必要があります。
もちろん、絶対ダメというわけではありませんが、敷居はかなり高くなるでしょう。
 
こうした経営環境の変化を肌で感じている経営者は多いでしょうが、それでも、これからの淘汰を潜り抜け自社を強化する具体策までは行き着けていないのではないでしょうか。
当社もそうした中小企業のひとつですから、本メルマガやネット発信を通じて、読者の皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。
 
まず、現在の中小企業の商売の内容を考えてみましょう。
比率として、大企業あるいは中堅企業の下請け業が多いという実態があります。
顧客層の偏りと固定化が問題です。
次に、事業の質や技術の独自性の低さ、さらには営業能力の低さという中小の根本問題があります。
「そんなことは分かっているが、どうやって抜け出すんだよ」と反論されそうですね。
そう、どの問題も一朝一夕で解決できる問題ではありませんね。
 
では、中小企業に打つ手はないかというと、もちろん、そんなことはありません。
こうした実態を自覚し、解析し、できるところから自社の経営を変えれば良いのです。
こんなことを言うと「それが出来れば苦労はないよ」と反論されるでしょうが、しかし反論したって経営は良くなりませんよ(当たり前)。
 
経営者の中には、孫子の兵法を学ばれた方もいらっしゃるでしょう。
本メルマガで何度も書いていますが、私は、孫子研究の第一人者と言われた故武岡先生に10年近く師事し、一対一での教えも受けました。
何度か襲われた倒産の危機を潜り抜けられたのは、この教えのおかげと思うところがあります。
大事な教えはいくつもあり、大局から学ぶべきですが、あえて小局の「軍争篇」から取り上げてみます。
“軍争”とは、まさに実際の戦争になった事態を指す言葉です。
戦場で両軍が相対している状態を想像してください。
その中でとるべき戦術は「正奇詭」であると、孫子は説いています。
次号は、この解説を行います。
 
<追伸>
2番目の話題で取り上げたように、おりしも自民党総裁選が本番です。
私に投票権はありませんが、各候補者がどのような経済政策を唱えているかを注視しています。
ところが、名前が挙がっている候補者の多くは、親中、媚中と言われる人たちです。
つまり、「中国に媚を売ることで日本の経済は生き延びられる」と思っている政治家です。
「誰が?」は、ここで書くまでもなく、読者のみなさまはお分かりかと思います。